韓国フェミニズム小説集 ヒョンナムオッパへ

いい読書だった。フェミニズムというワードに引かれた。小説の世界は今まで男性中心だった。僕は新しい物が好きだ。フェミニズムと聞いて新鮮な響きがあった。今の日本に足りない物だ。日本が旧態依然としている時に韓国はもっと前を行っている。男だろうが…

風の巻く丘

マリーズ・コンデの風の巻く丘を読了。壮大な物語。登場人物が沢山出てくる。人物相関図を作らないと混乱する。舞台は十九世紀後半から二十世紀前半にかけてのカリブ海の島々。著者のマリーズ・コンデはグアドループ出身でフランスで教育を受けた。グアドル…

宇宙に行くことは地球を知ること

宇宙飛行士の野口聡一と矢野顕子の対談本。今まで読むのを渋っていた。宇宙と聞いてとても難しいイメージがあった。でもこれほど読みやすいとは思わなかった。宇宙飛行に関して大分詳しくなった。 野口の経歴がすごい。今までに2回の宇宙飛行の経験があって2…

水深五尋

こういう物語はイギリス人にしか書けないなと思った。海に囲まれた島国だからこそ書ける小説だ。 舞台はイングランド北東部の北海に面するガーマスと言うとても寒い所だ。ガーマスは架空の土地で著者の出身地のタインマスをモデルにしている。著書の自伝的要…

パワナ くじらの失楽園

ルクレジオの冒険小説が大好きだ。彼は世界中を舞台に物語を創作した。 インディアンは鯨の事をパワナと呼ぶ。帯にはこう書いてある「愛するものを殺すことができるのだろうか。」てっきりこれは人と鯨の友情を描いた小説だと思った。しかし違った。この物語…

長い旅の途上

星野道夫の素朴な文章が好きだ。沢山の小さな物語。ムースやグリズリー、カリブー、多くの動物を見た。星野は特にカリブーの北極圏の季節移動に魅了されていた。北極圏の厳しい気候で何千キロもの旅をするカリブー。 ブルックス山脈は自然が手付かずに残され…

南極で心臓の音は聞こえるか 生還の保証なし、南極観測隊

著者は88年生まれ。学年は分からないが僕と同い年だ。研究者として比較的、若い世代がこうやって本を書いてくれる事が嬉しい。いい読書だった。 前回に読んだ渡貫さんの本は調理隊員として彼女は南極に行った。彼女の場合は昭和基地に留まる事が多かった。今…

南極ではたらく

調理隊員として見事3回目の挑戦で合格した渡貫淳子氏の1年4ヶ月を南極で過ごした記録だ。彼女はつい最近までコンビニで売られていた悪魔のおにぎりの考案者だそう。南極ではゴミを全て持ち帰らなければならないので最低限ゴミを抑えるために天かすと麺つゆを…

野生の呼び声

ジャック・ロンドンの「野生の呼び声」を読了。久しぶりに良い読書。確か去年にハリソンフォードが主役で実写映画化もされている。1903年に出版されたアメリカ文学の古典だが、その人気は未だに衰える事はない。 「野生の呼び声」は一言で表すと犬が主役の物…

伝奇集

難解で哲学的な短編集。 伝奇集 (岩波文庫) 作者:J.L. ボルヘス 岩波書店 Amazon

JR 上野駅 公園口

柳美里の作品を読むのは初めてだ。上野公園でホームレスになった男の話。カズさんと呼ばれる、福島県南相馬市出身の男。大家族だった。七人兄弟の長男で、家は貧乏だった。1933年で生まれで天皇と同い年だった。若い頃から北海道に出稼ぎに行ったり、苦労が…

旅をする木

僕が今手に持っている「旅をする木」は2017年に発行された40刷だ。初版は1999年。ずっと読み継がれている本にはハズレがない。3頁程の小さな物語が33篇。本書には写真は無いが文章だけで十分にアラスカの大地の美しさが伝わってきた。読者の精神にとても良い…

いちまいの絵 生きているうちに見るべき名画

原田マハは世界中の美術館を数多く訪れている。旅をする目的は美術館を訪れることでもある。僕はとても彼女の生き方に共感した。ヨーロッパやメキシコ、アメリカまで実際に脚を運び美術館に行ってお目当ての画の前に佇む。それだけで十分に達成感がある。僕…

青春ピカソ

岡本太郎によるピカソ論だ。太郎の文体は荒々しい。そして哲学的で難しい。彼は芸術とは既成の概念を破壊する事だと言う。徹底的な破壊だ。ピカソを天才だと認めた上でピカソを超えると言うからすごい。太郎からピカソへの挑戦状だ。太郎は言う、真の芸術は…

供述によるとペレイラは

須賀敦子の翻訳が好きで買った。アントニオ・タブッキの作品だ。ポルトガルの温暖な気候とは裏腹に1938年はファシズムの魔の手が及んでいた。リスボンで元新聞記者で今は小新聞社の文芸記事担当のペレイラ。彼は妻に先立たれ、心臓も悪く太っていて何だか冴…

英米文学者と読む「約束のネバーランド」

集英社新書は少年ジャンプと同じ集英社なので漫画系の新書があってとてもいい。タイトル通り、気鋭の英文学者による「約束のネバーランド」の論考本だ。とても良く書けていると思う。英文学からの影響やジェンダーから見た約ネバ。そもそも少年ジャンプで女…

白い病

カレル・チャペックの白い病を読了。阿部賢一氏による新訳である。1937年刊行の作品で、肌に大理石のような白い斑点が出来る感染病が人類を危機に陥れる、まさに現在の新型コロナのパンデミックと同じ状況だ。一方でこの戯曲では戦争による武力による勝利で…

秋 アリスミス

とても現代風の作品だ。この小説で取り扱っているテーマは複数ある。EU離脱でナショナリズムが跋扈するイギリス、現在でも女性の立場が弱い世界を(著者は日本なんて論外だと思っているかも)心配する声、そして読書や絵画、芸術の愉しみ。 101歳の老人のダニ…

やし酒飲み 

エイモス・チェツオーラのやし酒飲みを読んだ。とても楽しい読書だった。 奇想天外で神話のような世界。やし酒を鱈腹飲んでいるお金持ちの息子がある日、父が死にやし酒を彼に作ってくれたやし酒の名人が死に友人にも見放されたが決意してまだ天国に行ってい…

 ノモレ

国分拓のノモレを読了。とてもレベルの高いノンフィクションだ。NHKの映像作品の取材からこの作品が生まれた。 ペルーには古来から先住民が住んでいた。今から500年ほど前にスペインからゴムの木を目当てに西洋人がやってきた。スペイン人と先住民の衝突があ…

藤田嗣治 手しごとの家

こんなにグローバルに活躍する画家が日本にいたとは。インテリアや服装、食器類、全部自分の手作りだ。手先が器用で多才な人だったフジタ。戦前に中南米を2年間も旅したのはフジタぐらいだろう。当時、民間の航空機は無かったから船旅だ。フランス人の恋人と…

予告された殺人の記録

ガルシア・マルケスの本が400円で読めるなってお得だね。150頁ほどの中編小説であるが、中身が濃い。 マルケスのすごいのは複雑な人物相関図でそれがちゃんと繋がっている所だ。沢山の人物が登場してくるため、メモをとりながら読んだ。舞台はコロンビアの大…

神去なあなあ夜話

面白い。スラスラ読める。今度は冬だ。神去村の前回の後日談と歴史と平野勇気の恋の物語だ。勇気の妄想がすさまじい。もう変態の域。彼が想いを寄せる直紀さんと無事結ばれるのか?最後まで読めば分かる。 前作よりも少し勢いに欠けるがもっと神去村の事を知…

神去なあなあ日常 三浦しをん

最早説明不要の傑作だと思う。久しぶりに読み返した。やはり良い。都市部のストレスフルな生活に疲れた人、身近に自然が無い人にはオススメ。この小説から漂ってくるのは森林の豊かな香りだ。昔から俺は山とか川とか自然が豊かな土地に住むのに憧れていた。…

魯迅

魯迅の「酒楼にて/非攻」を読了。光文社の古典新訳をよく読む。ラテンアメリカ文学だったりブラジル文学だったりマイナーな作品が多いのがいい。今回は魯迅の短編集を読了。 魯迅の作品は一言で言って悲哀に満ちている。基本的に読書って孤独な行為だと改め…

流刑

パヴェーゼの「流刑」を読了。パヴェーゼの自伝的小説である。主人公のステーファノは首都の監獄生活から解放されてイタリアの最南端に流刑になった。実際にパヴェーゼ自身も反ファシズム活動で逮捕されローマで監獄生活を送った。南イタリアと言えばナポリ…

Mr.children 道標の歌

面白かった。久しぶりに読むノンフィクションだが、ミスチルが大好きなので楽しみながら読んだ。音楽評論家の小貫信昭氏が初期の名曲から現在の名曲まで順々に辿って行く。まずなぜグループ名がMr.Childrenなのか?文法的に間違っているが、大人から子供まで…

「他者」の起源 ノーベル賞作家のハーバード連続講演録

トニ・モリスンは非白人で女性で全く新しいタイプの作家だった。アメリカの人種差別は根深い。今でさえBLACK LIVES METTERのデモ行進がニュースで流れている。でも一方でアメリカでは真摯に人種差別問題に取り組んでいる風にみえる。イギリスはまだまだ白人…

血みどろ臓物ハイスクール

基本的に文学で生計を立ててきた人は圧倒的にアウトローが多い。古くいえば掌編小説で有名なO・ヘンリーは経済関連の罪で服役している。ドストエフスキーは非合法の集まりに参加した罪でシベリア流刑だ。 フランスの作家のジャン・ジュネなんて軽微な罪だが…

失踪者 

読書は何時も根気がいる。じっとして何かを取り組むのって集中力がいるよね。一日一回は必ず読書をする習慣を身に付けようとしている。今までカフカ長編3部作を全部読んだが「失踪者」が一番読みやすくて面白いと思った。「城」は長過ぎて疲れるし、「審判」…