南極で心臓の音は聞こえるか 生還の保証なし、南極観測隊

 

 著者は88年生まれ。学年は分からないが僕と同い年だ。研究者として比較的、若い世代がこうやって本を書いてくれる事が嬉しい。いい読書だった。

 

 前回に読んだ渡貫さんの本は調理隊員として彼女は南極に行った。彼女の場合は昭和基地に留まる事が多かった。今回の山田氏は研究者として南極に行った。同じ南極観測隊員でも立場が異なる。彼は気象隊員なので南極の奥深く頂上部まで行った。

 

 南極での研究の目的は地球温暖化から人類を救うためだ。地球温暖化の影響が顕著に表れているのが南極だ。温室効果ガスの増加によって氷雪が溶けて南極の水位が年々、上がっている。歴史的に見て地球は冷却化したり温暖化したり繰り返している。だから温暖化で地球が爆発したりする事はない。しかし人類の生存が危うい。気温が上昇すると、作物が育たなくなったり、野生動物が人間の移住地に入り込んできたり様々な問題が起こる。今、世界のニュースで良く耳にする気候変動だ。南極でデータを採取して地球温暖化を食い止めないといけない。

 

南極は98%が氷で覆われているという。そもそも南極は大陸なので氷のずっと下には陸が存在するのだ。

南極は日本列島の約37倍の面積で途轍もなく広い。昭和基地は沿岸部にあって海から基地へアクセスがし易い。

海上自衛隊が支援する「しらせ」砕氷船だった。ラミングと呼ばれる海氷に助走をつけて乗り上げて進んでいく砕氷船

無音の世界の南極ではブリザードがよく起こる。吹雪になると500メートル先は見えなくなる。視界が遮られる。大陸も馬鹿でかい。そんな世界で仲間とはぐれたら簡単に遭難してしまう。

南極の気温は冬季ではマイナス60度になる。南半球では7月から寒くなる。

 

 何よりもすごいのは南極大陸、内陸部への2回の旅だ。著者の山田氏は標高が3800メートルがあるドームふじ基地まで行った。後、冬季にみずほ基地に行った。ドームふじ基地昭和基地からは100キロも離れている。最も新しく作られた基地だが、現在は使われていない。南極大陸の内陸部は標高がとても高いので酸素が薄くなる。雪上車で向かった隊員たちの命の保証はない。まさにこの本のタイトル通り、生還の保証なしだ。雪上車に何か故障が起これば機械隊員が修理、点検する。医療隊員と同様に機械隊員の存在は重要で彼の代わりは他にいない。実際にブリザードで何日か足留めを食らった。食糧の予定日程分が尽きる可能性もある。南極大陸の内陸部への調査旅行はとてもリスクと緊張感を伴う移動だ。