ハツカネズミと人間

 

 新訳感謝。新訳をきっかけに読んだ。年譜あり解説あり、とても読みやすい翻訳で文句なし。

 スタインベックの作品は「怒りの葡萄」と「エデンの東」と「ハツカネズミと人間」が有名だ。

 小柄で知的で頼りになるジョージと大柄で不器用で少しおつむが弱いレニーの物語。作品を評する上で当時の時代背景を知る必要がある。1930年代のアメリカは大恐慌で不況のまっしぐらだった。仕事がない人が大勢いた。そんな厳しい時代の社会の底辺の渡り労働者で将来への希望がないジョージとレニー。

 でも二人は固い友情で結ばれていて決して孤独ではなかった。二人には夢があった。お金を貯めていつか自分たちの土地を持ってウサギや鶏を飼って、自分たちの土地で育てた極上の物を食べて生活する夢だ。

 大男のレニーの小動物への優しさはとても美しい。ボケットにはハツカネズミを入れて歩き、子犬が好きで本当に無垢で純粋な男だ。しかし不器用過ぎる。自分の怪力のせいでハツカネズミを握りつぶし、子犬も殺してしまう。美しい物を見れば見惚れてしまい触れて手を離さない。その性格が原因でトラブルばかり起こすレニー。最後は相棒のジョージに非情の決断を下される。すべてレニーの責任とはいえあまりにも悲しい結末。