島とクジラと女をめぐる断片

 

大西洋の島に関しては疎い。日本から遠く離れたヨーロッパとアメリカ大陸の間にある海は日本人からすれば知らなくて当然だと思う。タブッキなりの紀行文。というか真実の物語と空想の物語が混ざったような不思議な読書。

 

タブッキはポルトガルをこよなく愛していたが、大西洋の島々にアゾレス諸島がある。ポルトガルの領土でクジラ漁で有名な島々だ。今は過疎化が進んでいるが、昔はアメリカとヨーロッパを結ぶ重要な要地だった。アゾレス諸島を筆者が実際に訪れて体験した出来事の数々。

 

ルクレジオとかチャトウィンの作品に近い印象を受けた。

 

世界最大の哺乳類のクジラはとても神秘的な生き物だ。鯨油をくれる、肉もくれる、昔は生活する上で欠かせない存在だった。タブッキは現地で伝統的なクジラ漁に乗り合わせたが、正しくメルビルの小説の白鯨の世界だった。汽艇で海に繰り出してクジラを発見したら汽艇で曳航しているボートで近づきベテランの銛撃ちが狙いを定めてクジラを刺す。最後にとどめを刺してから銛綱で引きずって陸まで戻る。