アイヌと神々の物語

 

 38つの昔話。ここ一ヶ月アイヌの世界にどっぷりと浸っていた。アイヌの人々の生活に憧れている。俗世から離れて自然と調和して生きたい。自給自足の生活がしたい。アイヌの人々にとって熊は特別な存在だ。彼らは寒い冬を乗り越える為の毛皮を運んでくる。そして肉も貰える。熊は頭だけは大切に残しておき飾り立て祭壇に置く。そしてイヨマンテ(熊送り)の儀式が始まる。肉と和人との交易に使う毛皮を与えてくれる熊神に感謝の気持を伝える。イヨマンテを行わなかったら神様から罰が当たる。

 

 去年の12月に北海道の白老町を訪れた。アイヌの人たちと会った。近代的な設備の建物にアイヌ文化財が沢山展示されている。働いている人たちもアイヌの人々だ。やはり北海道はアイヌの土地だった。札幌(サッポロ)は勿論アイヌ語が由来で(稚内)ワッカナイもそうだ。土地の名前でアイヌ語は残っている。

 

 アイヌは人間という意味だ。萱野茂さんがアイヌ語から翻訳した38の昔話はどれもアイヌの文化が知れて面白い。宮沢賢治の童話に似ているなと思った。神様は身近に存在していた。眠れば夢を通して人間に語りかけてくる。神様と人間は対等な立場なので人間は神様に命令する事が出来る。勿論、無料ではなくイナウ(木で削って作った御幣)を用意しなければならない。

 

 チカップは鳥という意味で鳥の神様はカムイチカップと呼ばれる。鳥の神様はフクロウの事だがアイヌの世界ではフクロウはとても神聖視されていた。カムイはアイヌ語で神様の事でカムイは動物や物、あらゆる物に神様はいると考えられていた。家を守る守護神の神様や火を焚く火の神様、動物の神様も存在する。

 

 昔話なので男女の役割が分担されていた。男は狩に出て女は薪を集める。コタン(村)があり村長がコタンで山のようにデカい屋敷に住む。食べ物は鮭や熊や鹿の肉。囲炉裏で火を焚き家族で囲んで暖を取る。祖父母が孫たちに昔話を聞かせてくれる。近くには山があって川が流れて動物たちの鳴く声が聞こえてくる。イナウを削って神様に送り敬う。いつか萱野茂さんの故郷の二風谷にも行ったみたい。