ノモレ

 

 国分拓のノモレを読了。とてもレベルの高いノンフィクションだ。NHKの映像作品の取材からこの作品が生まれた。

 ペルーには古来から先住民が住んでいた。今から500年ほど前にスペインからゴムの木を目当てに西洋人がやってきた。スペイン人と先住民の衝突があった。一方は銃を使いもう一方は弓矢を使う。当然銃の方が圧勝した。多くの先住民は滅びたか文明側の人間になった。

 

 しかし今でもペルーには数百人、数十人単位の少数の先住民がアマゾン川のジャングルに住んでいるの。イゾラドと呼ばれる幻の先住民が存在する。彼等は裸族で弓矢を使い動物を狩り川の水を飲み自給自足の生活をしている。イゾラドはペルーの母国語のスペイン語が喋れない。そもそも文明側の人間との接触がない。だから感染病への免疫がなく一度でもインフルエンザや感染病に罹ると絶滅する。

 

 そう言えば、ペルーと言えばマリオバルガスリョサで有名だが彼の作品で「密林の語り部」という小説があった。あの作品にもアマゾン川のマチゲンガ族が登場する。しかし彼等は文明と交流を持っていて街に住むペルー人と物々交換をしたり紙幣を持っていて意思の疎通が可能だ。その点イゾラドは完全に謎に包めれている。

 

 ロメウはイネ族の村長だ。優秀な彼は都市に送られスペイン語を学び若くしてイネ族の村長になった。ロメウは彼の祖先とイゾラドは実は血が繋がっているのではと憶測をもっていた。100年前に生き別れになったイネの祖先と。実際にイゾラドはイネ語を喋る。最初は川を挟んで対峙するロメウとイゾラドたち。イネの言葉で友人を意味するノモレ、ノモレと全力で叫び友好関係をアピールするロメウ。徐々に打ち解けていく先住民たち。彼等にバナナをプレゼントして慎重に交流を続けていこうとするロメウ

 

 ロメウは先住民と話をして自分のイネ族の村を治めて、イゾラドの食糧を確保する為に役所にも出向き大忙しだ。ペルー政府は欧米の観光客の事しか頭にない。そもそもマドレ・デ・ディオス県は首都のリマやクスコの都市部とは大分離れている。ロメウは尽力する。絶滅の危機にあるノモレを救う為に。

 

日本のような単一民族には中々想像出来ない世界。久しぶりに面白いドキュメンタリー番組を観た気分だ。やはり先住民の伝統的な暮らしは守って、同時に彼等の命を守る為にも政府がサポートするべきだと思った。所で日本にはアイヌ人がいたが、ちょっと調べてみようかな。

 

ノモレ

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