諸隈 元氏の「人生ミスっても自殺しないで、旅を読了。久しぶりに旅行記を読む。タイトルがいい。今の自分の心境を物語っている。筆者が傾倒するヴィトゲンシュタインの足跡を辿る旅だ。筆者はヴィトゲンシュタインの哲学書の「論理哲学論考」の小説化を試み…
グギ・ワ・ジオンゴの泣くな、わが子よを読了。200頁ほどの中編小説だがとても良く出来ている。 ケニアがイギリスの植民地だった時代の話。 白人が支配する中で生まれ育ったジョローゲ少年。舞台は首都のナイロビから離れたのどかな街。一夫多妻制で大家族の…
素朴な小説。またいい本に出会えて嬉しい。自己犠牲とか友情とか愛情、人生で大切な事が凝縮されている。西インド諸島、大アンティル諸島にあるハイチ。エスパニョーラ島と呼ばれる島にあり右半分はドミニカ共和国。フランスやアメリカに支配されてきた歴史…
アフガニスタンの女性たちが書いた23の短編集。 色々、考えさせられる読書。基本的にイスラム教は男尊女卑の国が多いと思われている。一夫多妻制で男は複数の妻を持てる。そしてまだまだ日本以上にアフガニスタンでは女性の地位が低い。 この短編集はアフガ…
遠野物語は奥が深い。正直に言って、岩手の事は、宮沢賢治の故郷の花巻しか知らなかった。 遠野は山に囲まれた盆地。でも川が流れているので涼しげだ。この土地から沢山の物語が生まれた。遠野の舞台した100を超える小さな物語。 以下は遠野物語を読んで感じ…
歴史戦争小説。アフリカを舞台に書いた戦争小説はナイジェリアのビアフラ戦争、ルワンダ内戦。この小説で三度目だ。トルストイの戦争と平和のような史実と創作を織り交ぜた見事な小説。 500頁を超える大著。集中力が続くないので一日10頁で二ヶ月かけて読ん…
ルクレジオほど世界中を舞台に小説を書いた作家は他にいないだろう。見事な中短編集だ。 何故ルクレジオの小説はこれほどまでに多様性に富んでいるのか。それはイギリスに次いで世界中を植民地支配したフランスの歴史が理由だと思う。西アフリカや北アフリカ…
池澤夏樹さんが大絶賛したマイトレイ。再読だがやはり名作だと思う。 カルカッタの令嬢マイトレイとヨーロッパから働きに来たアラン。嫌らしい肉欲は一切なし。誠に純粋な若者の恋物語。筆者のエリアーデはルーマニアを代表する宗教学者で若い時にインドに留…
大西洋の島に関しては疎い。日本から遠く離れたヨーロッパとアメリカ大陸の間にある海は日本人からすれば知らなくて当然だと思う。タブッキなりの紀行文。というか真実の物語と空想の物語が混ざったような不思議な読書。 タブッキはポルトガルをこよなく愛し…
新訳感謝。新訳をきっかけに読んだ。年譜あり解説あり、とても読みやすい翻訳で文句なし。 スタインベックの作品は「怒りの葡萄」と「エデンの東」と「ハツカネズミと人間」が有名だ。 小柄で知的で頼りになるジョージと大柄で不器用で少しおつむが弱いレニ…
アディーチェの書く本は興味深い。僕は彼女のフェミニストを支持する。日本のある批評家のフェミニストは男性嫌悪を煽ったり、母性を否定して子供を持ちたくないと言ってクレイジーだなと思う。 今まで女性の痛みはずっと見過ごされてきた。家父長制やミソジ…
僅か12歳で内戦に巻き込まれて少年兵になったイシメール・ベアの物語。僕は彼より八歳年下だが、彼と同じようにEricb &Rakimのヒップホップを聴き育ったので他人事のようには思えなかった。アフリカの内戦と聞くと部族同士の衝突を思い浮かべるが、シエラレ…
38つの昔話。ここ一ヶ月アイヌの世界にどっぷりと浸っていた。アイヌの人々の生活に憧れている。俗世から離れて自然と調和して生きたい。自給自足の生活がしたい。アイヌの人々にとって熊は特別な存在だ。彼らは寒い冬を乗り越える為の毛皮を運んでくる。そ…
樋口一葉は日本のジョージ・エリオットか、ジェーン・オースティンか。とても思慮深い作風。百年以上前の小説だが全く衰えない新鮮さがある。現代でも通用する面白さがある。流石、五千円札の肖像に選ばれた人だ。 わずか二四歳で夭逝した一葉だが、彼女の視…
恐らくフェミニスト小説で最も重要な本だと思う。韓国は女性が強い。国の男女平等ランキングでは韓国は日本を上回っている。これからもさらに上位に進むだろう。何故なら韓国では男女平等に真剣に取り組んでいるからだ。 主人公はキム・ジヨン。キムは韓国で…
日本の男女平等ランキングは限りなく最下位に近い。ナイジェリアも一緒だ。ならばこれから良い方向に変えていかなければならない。フェミニズムは私の苦手な分野だったがアディーチェの本が好きだったので読めた。この本は2012年に行われたTedトークを本にし…
今年の6月にフィジーに行ってきた。南太平洋の島である。常夏でフィジーの人々はインドからの移民の人やフィジー人の人が居てとても陽気で優しかった。 一見、南国の島なので人々は賑やかでとても明るい印象を受ける。しかし歴史を辿ればアフリカやカリブ海…
ルクレジオは世界各地を旅して特にメキシコ文化に惹かれてそこで暮らした。中南米の原住民と共同生活をして失われていく文化と風習を観察して本いう形で残した。また自身の祖先が住んでいたモーリシャスを舞台にした小説を書いたとてもグローバルな作家だ。 …
初めてコルタサルの小説を読んだ。 彼の長編の「石蹴り遊び」はとても難解らしい。でも彼の短編小説はとても読み易い。現実か夢か分からない曖昧な世界を彷徨っている、そんな作風だ。これはコルタサルが少年の頃に読んだエドガーアランポーの影響だ。 日常…
今年の3月に岡山の倉敷にある大原美術館に行ってきた。目的はゴーギャンのタヒチ時代の絵が置いてあるからだ。日本国内でゴーギャンの絵が観れるなんて行かないと損だ。「甘美な大地」を鑑賞して満足して帰って来たのだが、まさかゴーギャンがこのマオリ族の…
1873年当時まだ民間の旅行飛行機が無かった時代にヴェルヌは世界一周を夢見ていた。こんな破天荒な冒険小説があるだろうか。莫大なお金を鞄に入れて八十日間で世界一周が出来るか挑戦したフォッグ氏。彼はとても合理的で冷静な性格で何時も落ち着いている。…
中村哲氏のNHKのインタビュー集。年代順に体系的に書かれているので大分読みやすい。中村氏の生涯を追うには十分な一冊。この本から色んな印象を受けたがまず一番に思ったのは地球温暖化だ。2019年12月4日の中村氏の絶筆にはこう書かれている。「凄まじい地…
ルーアンのある女子大学生の望まぬ妊娠による中絶の話。この話はエルノーの実体験だろうか。登場人物の名前がイニシャルで伏せられていた。恐らく限りなく実話に近いフィクションだろう。 1960年代のフランスは中絶は法律で禁止されていた。今ほど自由ではな…
初めてエドウィージ・ダンティカの本を読む。彼女は12歳にアメリカに移住したハイチ人だが、ハイチへの想いはずっと残っている。何故ならこの八つの短編は全部ハイチが関係しているのだから。私は今までハイチの事は殆ど知らなかった。勝手にカリブ海の平和…
ルクレジオはすごい。彼は世界中を舞台に小説を書いている。 表題作の「嵐」と「わたしは誰?」の二篇を収録。両方とも少女を主人公にした物語だ。 「嵐」は韓国の離島と思われる浜辺の埠頭で秘めた過去を持つ初老の男性と筋骨逞しい少女の物語。ルクレジオ…
八十日間世界一周の上巻だけを読了。ヴェルヌはやはり面白いな。もし誰かの全集を読めと言われたら私はヴェルヌかな。現代の作家ではルクレジオかチャトウィンか。兎に角、旅行作家、冒険小説が大好きだ。でも、巷で溢れているノンフィクションの旅行記は所…
椎名誠氏が敬愛している作家のジュール・ヴェルヌ。最近私も沢山の本を読む中で自分の読書傾向が分かってきた。私も椎名と同様に冒険小説の代表者のヴェルヌの作品が大好きなのだ。世界では彼の人気がある作品といえば、「海底二万マイル」「地底旅行」「八…
去年、ノーベル賞を受賞したアニーエルノーの作品が文庫化。事件と嫉妬の二篇を収録。 以下嫉妬の書評。 恋愛のもつれ。フランス文学だなと思った。この物語はエルノー自身の実体験かフィクションか分からないが(恐らく両方だろう) 誰もが陥るような嫉妬の苦…
シャングリラと呼ばれる理想郷がチベットの人を寄せつけぬ山奥にある。ペシャワール行きの乗っ取られた小型輸送機はチベットの山岳地帯に不時着した。乗り合わせたコンウェイはたまたま道中を通りかかった中国人の張に助けてもらう。(実際は全ては仕組まれた…
この本を読んで京都に旅行に行きたくなった。30年京都に住むサコさんが京都を論じる。世界はグローバル化の真っ只中、多様性が謳われる中、京都の伝統は生き残っていけるのか。生き残るには時代に順応して変化していくのが大切。伝統とイノベーションの融合…