闇の奥

新訳感謝。コンゴ・ジャーニーに続いてコンゴ川を舞台にした闇の奥を読了。コンゴ民主共和国の首都のキンシャサ。キンシャサはコンゴ川沿いにある大都市だ。そして対岸にはもう一つの国のコンゴ共和国の首都のブラザヴィルがある。こちらの都市も大都会だと…

森と氷河と鯨 ワタリガラスの伝説を求めて

今の現代人の生活はとても豊かである。24時間、営業しているコンビニが家の近くにあって自動販売機が何処でも見つかる。豊かになったのは事実だが、人との繋がりがとても希薄になった。自然と動物と一緒に生きる生活に憧れる。物々交換が当たり前で自給自足…

幼年期の終わり

クラークの代表作の幼年期の終わりを読了。不朽の名作のSF小説といえば、ジョージ・オーウェルの1984とオルダス・ハクスリーの素晴らしい新世界だが、僕は断然、クラークの幼年期の終わりが好きだ。まず、彼の生き方が好きだ。祖国の国のイギリスを離れてス…

ウィトゲンシュタイン家の人びと

こんなに面白い伝記には滅多に出会えない。これは真実なのだろうかと疑うぐらい波瀾万丈でノンフィクションとは思えない。ウィトゲンシュタインと言えば、論理哲学論考を著した哲学者で有名だ。ルートウィヒは七人姉妹兄弟の末っ子だった。そして二歳歳上の…

アイヌの昔話

萱野茂による20話のアイヌの物語。 祖母から聞かせて貰った物語。どれも人生の教訓になる話だ。物を大切に扱う、欲張らない、親を大事にする、自慢しない。北海道の大地で石狩川で鮭を取り自給自足の生活を送っていたアイヌの人々。カムイ(神様)を敬い、特に…

コンゴ・ジャーニー

物凄い密度が濃い探検記。四半世紀前に書かれた本だが全く色褪せない面白さがある。幻の恐竜を求めてコンゴの湿地雨林を探検する。物語はコンゴ人民共和国(現在のコンゴ共和国)の都会のブラザビルから始まる。そこから一気にコンゴ川の上流を遡る。水路は丸…

アイスランド 絶景と幸福の国へ

まだシーナとの旅を続けようと思う。本書のテーマは幸福についてだ。シーナの深い洞察力で日本と旅先の海外を比べて一体幸福とは何なんだろうと考える。物質的な豊かさと幸福は実は比例しないのだ。アイスランドの現地のガイドさんに日本は毎年三万人の自殺…

「十五少年漂流記」への旅 幻の島を探して

椎名誠の読書量には驚かされる。彼の人生に決定的な影響を与えた本は子供時代に読んだヴェルヌの「十五少年漂流記」だったという。そこから彼の世界中の未知なる国に訪れる好奇心が生まれた。冒険好きなのだ。僕もそうだが、読書と旅行が好きな人は幼稚な人…

そこのみにて光輝く

佐藤泰志の「そこのみにて光輝く」を読了。青春小説だ。北国の海辺の小さな町を舞台に起こる若者たちの物語。若いと言ってももう三十路手前だが。ギャンブルがあって傷害事件があってセックスがあってタバコを吸う。悲しい雰囲気は全くなく、物語は淡々と進…

タリバンの眼 戦場で考えた

ジャーナリストの佐藤和孝氏の著書。今までチェチェンやシリア、アフガニスタン等、世界の紛争地帯を取材しているベテラン。中でもアフガニスタンの地域はほとんど訪れている。 シーア派やスンニ派、宗教の対立やらパシュトゥン人とハザラ人の民族間の対立。…

インド神話物語 ラーマーヤナ

感無量。毎回、大袈裟で恐縮だがこんなに面白いファンタジーは読んだ事がない。イギリスの指輪物語ではなくアジアの人々はラーマーヤナを読んだ方がいい。紀元後二世紀頃に誕生した物語で今まで多くの作家によって読み継がれてきた。地域や国、作家や年代に…

ブロディーの報告書

ボルヘスの短編小説11編。ボルヘスの短編小説はとても難解で読み難い。でもこの短編集は伝奇集よりは遥かに読み易い。ボルヘスは博学なのでラテンアメリカの歴史上の人物が沢山出てくる。訳注があるので有難い。決闘やらナイフやら居酒屋やらガウチョやらと…

アーモンド

ソン・ウォンピョン氏のアーモンドを読了。韓国では30万部を超えるベストセラーだとか。人よりも扁桃体の大きさが小さく共感する力が無い高校生の青年。人は一人では生きていけない。人の出逢いを通じて徐々に共感する力を取り戻す青年の物語。 共感はよく論…

ロサリオの鋏

コロンビアの作家のホルヘ・フランコが書いた「ロサリオの鋏」を読破! まずコロンビアと聞いて何が思いつくだろうか。コカインの製造元、麻薬組織によるテロ事件、銃による殺人事件。兎に角、暴力的で治安の良くない国。正しくその通りなのだが人と人との繋…

イルカの島

この小説は1963年に書かれたが全く古臭さを感じさせず新鮮な面白味がある。やはり名作は色褪せない。 海洋SFは珍しいジャンルだがクラークはやはり王道のイギリス小説を踏んでいると思う。夢がある。まずホヴァーシップという名の海に浮遊する近未来的な船に…

オルラ/オリーヴ園

久しぶりのモーパッサン。2020年になっても古典が訳されている。新訳の方が嬉しい。やはり古典は面白い。長年、読み継がれたからはずれはない。モーパッサンは生涯に300の短編小説を描いた。本書には八篇の物語が入っている。精神病を患った男の幻覚の物語だ…

エレンディラ

マルケスの物語の舞台はカリブ海沿岸が多い。なぜなら彼が幼少期に住んでいた祖父母の家がカリブ海沿岸の田舎町にあったからだ。マルケスの幼少期の体験が彼の物語に影響を与えたと言える。この短編集は6つの短編と1つ中編小説が入っているが、どれも面白い…

道化者

マンの短編を5つ収録。 マンの作品はやはり好きだな。マンは外の世界との交流を絶ち自分の世界に引きこもり孤独に生きていく。でもその環境から沢山の物語が生まれた。魔の山は大長編で哲学的な描写があって正直に言って読み難い。マンは短編集の方がいい。…

引き潮

宝島で有名なスティーヴンスンの「引き潮」を読了。コナンドイルのお気に入りの海洋小説だとか。本邦初訳。一見、浪漫の冒険海洋小説かと思いきや実はそうではない。正確には前半はワクワクするような展開が待ち構えている。タヒチ島で浮浪者のような生活を…

幽霊塔

江戸川乱歩の幽霊塔を読了。 最初は分からない事だらけ。謎めいた美女の野末秋子、彼女は長い手袋をはめて左手を隠している。何か秘密があるのだ。彼女は大変な過去を背負って生きている。ある者に弱みを握られて生きているので決して幸せな立場ではない。彼…

愛その他の悪霊について

面白い。ラテンアメリカの植民地時代に悪霊に取り憑かれたと噂される少女の物語だ。当時は教会の権力が途轍もなく強かった。侯爵でさえ司教の指示には逆らえなかった。マルケスは元々新聞社の記者でジャーナリストだったから史料を集めて歴史小説を描くのは…

ジュリアン シーザー

シェイクスピア全集25 ジュリアス・シーザー (ちくま文庫) 作者:W. シェイクスピア 筑摩書房 Amazon

ハルーンとお話の海

初めてサルマン・ラシュディの著書を読んだ。児童文学のカテゴリーにこの小説は当てはまるが、大人も十分に楽しめる物語だ。不思議の国のアリスに出てくる、トランプの兵隊を模した様な紙の兵隊が出てくる。スーパーマリオブラザーズのクッパに捕まったピー…

若き日の哀しみ

ダニロ・キシュの自伝的短編小説を読破。 ユーゴスラビアの文学だ。セルビアやクロアチア、スロベニアがまだ分離、独立する前にあった多民族国家だ。訳者に山崎佳代子氏はベオグラード在住でキシュをセルビア語から訳した。 キシュの父親はユダヤ人で母親は…

アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」

北海道の長万部という名の駅がある。読み方はおしゃまんべ。恐らくこの駅名はアイヌ語から来ている。 アイヌ文化の入門書。ゴールデンカムイの漫画付きなので読み易い。 昔は交易が盛んだった。アイヌ人が狩猟で熊を狩り肉を和人と物々交換して着物を手に入…

アイヌの世界に生きる

20日間ほど北海道の十勝に住むアイヌ人女性のアイヌ語を口述筆記した記録だ。アイヌ人女性の人となりと生い立ちも書かれている。まずこの本が書かれたのは1984年で文庫化されて出版されたのが2021年。何故、今になって復刻されたのだろうか。ゴールデンカム…

シンプルな情熱

面白い。この本は1992年に出版された。2019年に映画化された。今手元にあるのは2021年再版で映画のカバーが付いている。長く読み継がれている本は良い本が多い。著者のアニーエルノーの実体験を元にした彼女の自伝的な作品だ。とても簡潔な文章で恋煩いを表…

絵のある自伝

安野光雅の画が好きでシェイクスピアのちくま文庫のを集めている。この自伝には画が50点以上も入っている。安野の描く画は素朴で美しい。とても精神に良い影響を与えると思う。やはり彼も多くの画家がそうであったように旅行家だった。そして沢山の本を読ん…

悪い娘の悪戯

リョサは偉大な作家だなと思った。緑の家を読んだ時の感想は正直に言ってイマイチだった。ノーベル文学賞の受賞者の作品としては物足りないなと思った。彼の得意分野は歴史小説だ。歴史を取り扱った作品が多い。でも「悪い娘の悪戯」は現代小説だ。現代小説…

2004年12月に起きたのスマトラ沖地震で両親と子供2人と夫を失った著者の回想録。 著者のスナーリ・デラニヤガラはスリランカのコロンボ出身で家族でスリランカのヤーラで休暇中に津波に巻き込まれた。 本書は2013年に出版された。何故ここまで長い年月を経て…