南極ではたらく

 

 調理隊員として見事3回目の挑戦で合格した渡貫淳子氏の1年4ヶ月を南極で過ごした記録だ。彼女はつい最近までコンビニで売られていた悪魔のおにぎりの考案者だそう。南極ではゴミを全て持ち帰らなければならないので最低限ゴミを抑えるために天かすと麺つゆを使ったおにぎりが誕生した。

 

 まず第一に南極大陸には何もない事に驚いた。一面、見渡す限り真っ白。あまりにも非日常の世界なので夢をみているみたいだ。ペンギンとアザラシが居るだけ。でも生き物がそばに居るだけで安心だ。魚も生息していて釣りもできる。

 

 渡貫氏の南極に行きたいという強い意志があった。第55次隊から毎年応募して遂に3度目での試験で合格して第57次越冬隊に選ばれた。彼女は学生時代に自転車競技に打ち込んでいて体力があった。そして調理師の免許も持っていた。南極地域観測隊に選ばれるのは僅か30人と言うから驚きだ。

 

 まず、南極にはどうやって行くのかこの本を読むまで知らなかった。まず飛行機で日本からオーストラリアのフリーマントルまで行きそこから海上自衛隊の船「しらせ」で行くのだ。南極の岸辺まで来たらヘリコプターで基地まで向かう。着いたら第56次隊のメンバーと入れ替わる。彼らのボロボロの服装や焼けた顔が印象的だ。

 

 そして1年間は物資の補給船も無く完全に隔絶した世界で隊員30人と一緒に過ごす。彼女の仕事は調理隊員なので厨房に立つ時間が多いがそれ以外には除雪作業や南極の道なき道を雪上車で運転する。調理隊員と医者は2人いるので相方さんと交代しながらやっていく。他の隊員は1人しかいないのでプレッシャーがある。

 

 南極の昭和基地は実は南極大陸上には無く大陸から約4キロ離れた島にある。南極大陸に向かうには雪上車で海氷上を進んでいく。実際には昭和基地がある東オングル島から氷で南極大陸まで繋がっている。踏み場を確かめながら赤い旗を目印に運転する。

 

 発電機はとても重要で南極の氷から水を作るのも機械だ。集団生活なので喧嘩になる事もある。皆30人それぞれ価値観が異なるのだから当然だ。南極での生活は制限が多い。基地の周りを半径1キロ程度は自由に行動できる程度でそれ以上は許可が必要。