予告された殺人の記録

 

 

 ガルシア・マルケスの本が400円で読めるなってお得だね。150頁ほどの中編小説であるが、中身が濃い。

マルケスのすごいのは複雑な人物相関図でそれがちゃんと繋がっている所だ。沢山の人物が登場してくるため、メモをとりながら読んだ。舞台はコロンビアの大西洋が見渡せるカルタヘナ港。

 

 司祭を歓迎する為にサンティアゴ・ナサールは早朝に起きて港に向かう。前日には友人の婚礼祭があったため二日酔いのままだ。サンティアゴが殺される事は町の全員が知っている。

でも、誰も本人には忠告しないのだ。彼の召使いも彼には黙ったままだ。父から引き継いだ牧場を経営する裕福な21歳の青年は誰からも近寄りがたい存在だった。

 

 日曜日に行われた婚礼祭は盛大に祝った。バヤルド・サン・ロマンが一目惚れしたアンヘラ・ビカリオとの結婚式だ。アンヘラは結婚を躊躇した。とても堅実な家庭で育った自分とバヤルドのようなお金持ちとでは釣り合わないと戸惑っていた。しかも彼女にはある秘密があった。バヤルドは彼女の為に高台にそびえ立つ豪邸を買い取ったりプレゼントと送ったりした。しかし結婚生活は僅か数時間で破綻した。初夜を迎えようとした時に彼女が処女ではない事が分かったバヤルドは失望した。そして彼女を自分の家に送り返した。母親はカンカンになって怒り彼女に暴力を振るった。家族にとって婚約の破棄はとても不名誉な事だった。

 

 そんな殴り倒された姉妹の姿を見て兄弟のパブロとペドロは大いに憤慨した。一体誰がこんな仕打ちを?兄弟は尋ねた。彼女はサンティアゴに殴られたと言った。怒り心頭の兄弟は彼を殺そうと決意した。彼女が嘘を付いた理由はサンティアゴが過去に彼女の処女を奪ったのだ。具体的な内容はサンティアゴ殺人事件の供述では一切語ろうとはしなかった。彼女なりの復讐だった。

 

 飲み屋のオーナーや肉屋や町中の人に兄弟はサンティアゴを殺すと言いふらしていた。まるで誰かオレ達を止めてくれと言わんばかりに。多くの偶然と不運が重なってサンティアゴは自宅の入り口の前で兄弟によって屠殺用のナイフで滅多刺しなって殺された。

 

何故止める事が出来なかったのか。本人の人を除いて町の人たちは皆知っていた。彼らは今から殺人予告されたサンティアゴを遠ざけるようになっていた。サンティアゴの友人のクリスト・ベトヤだけがこの殺人を止めようと必死になって行動を起こしたが後一歩の所で止められなかった。

 

この小説はマルケスの1番のお気に入りだそうだ。確かに前日の婚礼祭から当日に起こった事件まで被害者の足跡が詳細に描かれている。ラストの事件の詳細が明かされるまでぐいぐいと引っ張って行く展開に読者は引き込まれる。