流刑

 

 パヴェーゼの「流刑」を読了。パヴェーゼの自伝的小説である。主人公のステーファノは首都の監獄生活から解放されてイタリアの最南端に流刑になった。実際にパヴェーゼ自身も反ファシズム活動で逮捕されローマで監獄生活を送った。南イタリアと言えばナポリだが、ナポリよりももっと先、イタリアの靴型の国土のつま先の辺りまで流刑になった。丁度シチリア島の目の前だ。

 

 電車でステーファノはブランカレオーネという名の街まで運ばれてきた。手錠を掛けられた状態で。彼の生活は流刑なので門限があって遠出が出来ず署長に常に監視されている身だ。だから海辺に建つ流刑小屋から近場で時間を潰す。泳いだり散歩したり。人々はとても貧しい。しかしクリスマスの日に子供たちが近所の家を周りお布施を貰う儀式があったり住む人々は楽しそうでもある。物乞いとの出会いや現地の人々の交流があった。

 

 ステーファノは酒屋に頻繁に出入りしていた。そこでジャンニーノと言う名の友人が出来た。彼と一緒に狩猟に行った。自分が泊まっている小さな宿の家主の娘に恋をしてしまう。エーレナという名の娘に。彼女との逢い引き。友人や恋人はいるがステーファノは孤独だ。自分がよそもので、流刑者だからだ。寝ながら夢想に耽る日々。ある日ジャンニーノは婦女暴行の罪状で都市へと連行される。ステーファノは自分と同じ立場に置かれたジャンニーノを心配する。最後はステーファノは釈放され自由の身になる。この長閑な村を去る場面で物語は終わる。

 

 少し古いタイプの小説だ。実際にこの小説が書かれたのは1938年。パヴェーゼの最初の長編小説。実は僕自身、イタリアに行った時にナポリまでは行った事がある。確かにローマと比べると物価がかなり安い。でも暗いイメージなんてなかった。イタリアの人は陽気で明るいイメージのままだった。でもこの小説が書かれた時期のファシズムのイタリアでは人々は抑圧されていた。知識人というだけで逮捕されたパヴェーゼ。彼の目を通して語られる南イタリアの景色や人々。とても素朴な小説だ。