ノアノア

 

 今年の3月に岡山の倉敷にある大原美術館に行ってきた。目的はゴーギャンタヒチ時代の絵が置いてあるからだ。日本国内でゴーギャンの絵が観れるなんて行かないと損だ。「甘美な大地」を鑑賞して満足して帰って来たのだが、まさかゴーギャンがこのマオリ族の女性を描くためにこれほどまでにエネルギーを費やして完成させたとは思いもよらなかった。

 

 タヒチ時代の絵は当時の展覧会では不評だったようだが、彼は自分のタヒチの絵を理解してもらうためにノアノアを書いたのだ。ノアノアとはタヒチ語で名詞で「心地よい匂い」形容詞では「香しい」を意味する。

 フランスの文明社会から離れて野蛮人になるべくタヒチに旅立ったゴーギャン。1891年6月から1893年6月まで2年間のタヒチでの滞在記である。でも訳者の解説によれば、多分に脚色が含まれているらしい。フランスからニューカレドニアのヌメアを乗り継いで船でパペーテまでは約2ヶ月かかる長旅だ。

 

 これほど外交的な画家が今までいただろうか。中心地のパペーテでは文明化されていて物足りず奥深い原始の暮らしをしている人達と一緒に生活をする。マオリ族の女性を妻にして彼女たちの絵を描いた。