マイトレイ

ミルチャ・エリアーデのマイトレイを読了。珠玉の恋愛小説。また本棚にずっと残しておきたい本が増えた。フォースターのインドへの道が出版されたのが1924年でエリアーデのマイトレイは1933年に出版された。両方とも異文化の接触が物語のメインで異なる民族…

アフガニスタンの診療所から

2019年の12月4日にアフガニスタンで医師をしている中村哲氏が何者かに銃撃を受けて殺された。運転手と4人のボディーガードも含めて全員が亡くなった。アフガニスタンは今だにタリバンがいて武装組織がいてイスラム国がいて非常に危険な地域だ。日本で生温い…

ぼくらが漁師だったころ

チゴズィエ・オビオマのぼくらが漁師だったころを読了。今、アフリカから特にナイジェリアには沢山の良い作家がいる。オビオマもその1人である。作品のレベルがとても高いと思った。本作品は青春小説だ。オビオマは29歳の時にこの物語を書いた。若い世代にし…

不思議の国のアリス

ルイス・キャロルの不思議の国のアリスを読了。数ある翻訳の中でなぜ本作品を選んだのか。まず第一にハードカバーで字が大きくて目が疲れない事と2015年出版の新しい翻訳で、その上余計な注釈が無くて物語に集中できる事そしてなんと言っても挿絵が非常に綺…

砂の本

ホルヘ・ルイス・ボルヘスの砂の本を読了。ボルヘスの博学な知識に圧倒された。短編集であるが、どれも奥が深くて密度が高いので時間をかけてゆっくり読了。どうすればこんな古今東西の物語を創造できるのだろう。ボルヘスはブエノスアイレスの国立図書館の…

ファミリーライフ

アキール・シャルマのファミリーライフを読了。現実は厳しい。でも負けちゃいけない。生きるには粘り強さが必要だ。アメリカに移住したインド人一家の物語だ。兄のビルジュは優等生で将来を期待されたエリートだった。不幸は唐突に訪れる。プールにジャンプ…

モンテ・フェルモの丘の家

ナタリア・ギンズブルグのモンテ・フェルモの丘の上を読了。書簡形式の手紙だけのやり取りで物語は進む。非常に明快で読み易かった。登場人物が多過ぎて、正直に言って誰が何をやったか、人物の背景とかは一回読んだだけでは把握出来ないと思う。 イタリア人…

侍女の物語

今まで読んできたディストピア小説の中では抜群に面白かった。フェミニズム文学の騎手のマーガレッド・アトウッドの代表作だ。昨今のフェミニズム情勢からして非常に重要な一冊だ。この物語にはSF的な要素とディストピア的な世界がある。ディストピア小説の…

川端康成 古都

久し振りに読み返した。10年ぐらい前に読んだが、全く記憶にない。当時の自分の読解力の低さが原因だ。改めて思うのはすごく味わい深い小説だ。一語一句が丁寧に書かれていて本当に自分が京都に居るような気持ちになる。古都は何度も映画化されている。岩下…

金原ひとみ 持たざる者

金原ひとみの持たざる者を読了。4人からなる一人称のオムニバス式の小説である。それぞれ繋がっていて先の展開が気になる。金原ひとみの作品は内面の描写が多い。トルストイとかドストエフスキーのようだ。彼女の作品は粗削りだと言ってもいいが、それが金原…

綿矢りさ 手のひらの京

京都を舞台にした小説は川端康成の古都を読んで以来だが、面白かった。私自身は10年以上前に京都旅行に行ったが清水寺に行った事と鴨川に観光客が溢れかえっていた事以外は覚えていない。滞在したのも短かったのでまだまだ京都の奥深さは分かっていない。嵐…

日本を撃て

見沢知廉の日本を撃てを読了。絶版の本である。探すのにえらく苦労した。彼の数ある著書の中で本書が一番好きだ。見沢氏の小説は右翼や左翼の知識がないとよく理解出来ないと思う。その筋に詳しい人向けだと思うが彼のノンフィクションは誰にでも楽しく読め…

精霊たちの家

イザベル・アジェンデの精霊たちの家を読了。いや。すごい。ある一族の壮大な物語である。著者のアジェンデは故郷の軍事政権に掌握されたチリを去り亡命先のベネズエラで本書を執筆した。ラテンアメリカ文学のマジックリアリズムの要素は本書にもみられる。…

見沢知廉 囚人狂時代

久しぶりの再読。今改めて通読してみてやはりこの本は物凄い。12年間の刑務所暮らしの記録である。ノンフィクションなのが驚きだ。こんな世界が本当に存在するのだろうか。とても衝撃的な内容だった。見沢さんのいう通り刑務所の中はダンテの神曲の地獄の世…

老いぼれグリンゴ

カルロス・フエンテスの老いぼれグリンゴを読了。以前私がメキシコに旅行に行った時に驚いたことがある。メキシコ人が読書好きでいたるところで古本市場を見かけたことだ。マンの作品やウルフ、ワイルド、世界文学が揃っていた。駅前にも本が置いてあった。…

夜間飛行

サン=テグジュペリの夜間飛行を読了。最近、チャトウィンのパタゴニアを読んだが作中でこの作品に触れる箇所がある。夜間飛行はパタゴニアでの郵便飛行機を描いた作品だ。新潮社の翻訳はかなり古い。だから光文社の古典新訳を選んだ。素晴らしい翻訳。言葉…

君たちはどう生きるか

宮崎駿の本書の映画化決定を機会に読了。挿絵があって非常に読み易かった。宮崎駿は消費するよりも生産する側になりなさいと言ったが、この名言はこの作品に書かれているので宮崎駿が本書に相当、影響を受けたのがわかった。映画が楽しみである。 君たちはど…

パタゴニア

チャトウィンのパタゴニアを読了。すごい。紀行文学の傑作。情報量が多くて中身が一杯詰まっている。優れた学術書を読んでいるような気がした。それでも全然堅くない。小さな物語がいくつも入っている。全てはパタゴニアについて関係している。日本からはは…

十二夜

松岡和子さんの翻訳はいい。 良い作品だった。 シェイクスピア全集 (6) 十二夜 (ちくま文庫) 作者:W. シェイクスピア 発売日: 1998/09/01 メディア: 文庫

あしながおじさん

あしながおじさんの新訳を本屋で発見したので購入。訳者は岩本正恵さん。以前読んだ世界の果てのビートルズも彼女の翻訳で非常に読みやすい。本書の翻訳を最後に亡くなったしまった。とても惜しい方を亡くしたと思う。まだ50歳だった。ご冥福をお祈りします…

アフリカの日々

アイザック・ディネーセンのアフリカの日々を読了。ずっと積読だった本。中々読む気になれなかった。私の妙な先入観があったからだ。人種差別的な西洋人からみたアフリカ本と私の中で決めつけていた。驚いたのは著者のデンマーク人のディネーセンは最大限の…

太平洋の防波堤、愛人 ラマン、悲しみよ こんにちは

長らく積ん読だった河出書房の世界文学全集のサガンとデュラスの作品を読了。監修は池澤夏樹だが彼のセンスの良さには畏れいる。彼の全集を全部読めばそれだけで世界中に旅行に行った気分になれる。この全集には異文化への理解も多い。デュラスは彼女の出生…

トルストイ 文読む月日 上

トルストイの代表作といえば戦争と平和だっりアンナカレーニナだったり膨大な長編小説で読破するのに時間が掛かる。正直にいって読むのが億劫だ。でも文読む月日は短編も入っているので大変読みやすい。トルストイの短編を読むだけでも十分に彼の魅力に触れ…

再読 インドへの道

インドへの道が書かれてもうすぐ100年になろうとしている。1924年に本書は書かれた。3年ぐらい前に読んだが細部まで詳しく覚えていなかったので久しぶりに再読した。何回でも読み直したくなるぐらいの面白さがある。 現在はグローバルの時代だ。航空券が安く…

大地のうた

こういう美しい小説が誰にも読まれずに埋もれているのは勿体無い。Amazonのレビューは誰も書いてない。長らく絶版になったいたのを2008年に新装されたのが本書。ベンガル語からの翻訳でとても瑞々しい日本語。翻訳者に感謝したい。カースト制度の最上位のバ…

アルトゥールの島

モランテのアルトゥーロの島を読了。ナポリを南下し地中海にある架空の島が舞台の物語。主人公のアルトゥーロはまだ14歳の少年である。面白くて魅力的な設定。14歳の思春期で移ろいやすい性格を巧みに描いている。中山エツコ氏の新訳も素晴らしい。 アルトゥ…

星の王子さま

サン=テグジュペリ自身が描いたカラーの挿絵付き。 星の王子さま (岩波文庫) 作者:サン=テグジュペリ 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2017/07/15 メディア: 文庫

オンザロード

ケルアックのオンザロードを読了。 オン・ザ・ロード (河出文庫) 作者:ジャック・ケルアック 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2010/06/04 メディア: 文庫

マンスフィールドパーク

初のジェイン・オースティンのマンスフィールドパークを読了。 高慢と偏見 (中公文庫) 作者:ジェイン・オースティン 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2017/12/22 メディア: 文庫

サルガッソーの広い海

ジーン・リースのサルガッソーの広い海を読了。正直に言ってちょっと難解で一回読んだだけではよく分からない印象。池澤夏樹の解説があって理解出来た箇所もあるが人物相関図が複雑で誰がミスアントワネットの父親で誰がアントワネットの兄なのか(そもそも兄…