日本を撃て

 見沢知廉の日本を撃てを読了。絶版の本である。探すのにえらく苦労した。彼の数ある著書の中で本書が一番好きだ。見沢氏の小説は右翼や左翼の知識がないとよく理解出来ないと思う。その筋に詳しい人向けだと思うが彼のノンフィクションは誰にでも楽しく読めると思う。見沢氏の全貌を知るには本書が最適だ。90年代の日本を見沢氏が語り尽くす。エッセイのようだが、見沢氏の異常な経歴から発せされる文章はユーモアに富んでいてそれでいて物事の核心に迫っていると思う。非常に貴重な意見だと思う。12年間での刑務所暮らしでその内の9年間は厳罰独居房に収監され地獄の底を経験した。私が覚えている限りで見沢氏ほど壮絶で苦しんだ人生を生きた人は他にいないと思う。彼が尊敬するドストエフスキーだってシベリア流刑での獄中生活は4年間だった。ヒトラーだって自殺はしたが愛人と一緒に死んだ。見沢氏ほど私にとって偉大な人は他にいないと思う。

 彼のエネルギーは凄まじい。獄中で100冊以上の創作ノートを書いたり、出所後はメディア出演、公の場に出てコメンテーターとして活躍したり、週刊誌のコラムも多数執筆。囚人狂時代は10万部のベストセラーに。しかし疲労が原因で脳梗塞で倒れたり本当に命懸けで本を書いた。獄中記といえば古いのだとドストエフスキー死の家の記録だったり、現代だと佐藤優ホリエモンの獄中生活を綴った作品があると思う。見沢氏はいわば、その類の専門としていて刑務所での囚人や看守の態度など中の生活を赤裸々に詳細に文士らしい冷静な観察力で書いた。読書後は一言でいって絶対に刑務所に入りたくないっと誰しもが思うだろう。元々、見沢氏が収監された千葉刑務所は凶悪犯罪者が送られる所で有名だからだと思うが囚人は全く人間扱いされないので、まさにこの世の地獄である。

 見沢氏が刑期を全う出来たのも母親との絆と後は文学の力である。獄中内でひたすら創作に没頭した。見沢氏は文学を志し人を救える作家になろうと決意した。同時に書く事で贖罪と反省の態度を表した。本書の内容はドロップアウト不登校へのメッセージでもある。私のような登校拒否と神経科を通院を経験している者には本書は非常に励みになった。見沢氏の言葉の一つ一つが重みがあって非常に達観している。それは彼の獄中体験と読書経験と小説、詩や短歌の創作の結果だと思う。彼が起こしたスパイ粛清事件の一連の流れも書かれていて見沢知廉を知る上ではやはり本書が一番いいと思う。

 

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