川端康成 古都

 久し振りに読み返した。10年ぐらい前に読んだが、全く記憶にない。当時の自分の読解力の低さが原因だ。改めて思うのはすごく味わい深い小説だ。一語一句が丁寧に書かれていて本当に自分が京都に居るような気持ちになる。古都は何度も映画化されている。岩下志麻が主演の古都はアカデミー賞の外国語の部門にノミネートされている。確かにこの物語は小説より映画の方が向いていると思う。京都の伝統とか北山杉の景色は文章だとあまりぴんと来ない。というより知らない京都の催し物が多いので映画で鑑賞した方が早い。でも小説でも十分に京都の美しさを堪能出来る。

 綿矢りさが書いた京都と川端康成が書いた京都。祇園祭など共通の舞台が登場するが全く異なる。川端のはやはり時代を感じさせるが、ノーベル賞文学賞の受賞者の作品なので世界文学の一つなので読んでおいた方がいい。今まで沢山の外国人の観光客がこの本を片手に京都を散策してきたのではないだろうか。京都のガイドブックとしても十分に有用だ。でも作品としてもとても優れている。千重子と苗子の幼くして生き別れになった双子の姉妹の物語。親の西陣織を引き継ぐ秀夫と千重子を大事に育てた継母や継父、川端の人物描写は非常に巧みだ。取り敢えず映画を観る事にしよう。

 

古都

古都