モンテ・フェルモの丘の家

 ナタリア・ギンズブルグのモンテ・フェルモの丘の上を読了。書簡形式の手紙だけのやり取りで物語は進む。非常に明快で読み易かった。登場人物が多過ぎて、正直に言って誰が何をやったか、人物の背景とかは一回読んだだけでは把握出来ないと思う。

 イタリア人気質というか国民性というか、兎に角、人と人との繋がりが強い。お節介で世話好きな人が多い。ローマっ子ってこんなに優しいのかと思った。主役はアメリカに兄を頼りに仕事を探しに行ったジュゼッペと元恋人のルクレツィアの物語である。子供まで出来た元恋人と今だに親密な交友関係が続いているのはいかにも西洋人らしい。非常に温かい物語だ。疑似家族のように同居する人々。ジュゼッペの息子のアルベリーコはゲイで同じ同性愛者のサルヴァトーレと女友達のナディアと彼女の赤ん坊とローマで同じアパートメントで暮らしている。ついでに言うとナディアの娘の実の父親は去ってしまった。何故だが分からないがその赤ん坊を自分の子供として認知して育てるアルベリーコ。彼も孤児同然だったため赤ん坊に同情したのだと思う。こんな特殊な関係ではあるが、皆仲良く生活している。同じアパートメントの上の階にはジュゼッペの友人のエジストが住んでいる。エジストもアルベリーコの友達だ。皆んなが繋がっていて手紙で連絡を取り合っている。この作品の主題のテーマは人間関係だ。過去にルクレツィアとその大家族が住んでいたモンテ・フェルモのマルゲリーテという沢山の友人が出入りしていた一軒家。もう売却されてしまった家だがそこをを懐かしみローマにルクレツィアが移住してからもマルゲリーテに来た人達の交友関係は続いている。

 率直な感想はとてもイタリア的だなと思った。家族を大事にして情熱的に人を愛して読んで前向きになれる小説だ。唐突に訪れる死や思いもよらぬ妊娠と破局、予期せぬ事件の連続で若干、現実味に欠ける気もしないが、それでも読書中、ハラハラした。訳者の須賀敦子氏の力量もあると思う。