綿矢りさ 手のひらの京

 京都を舞台にした小説は川端康成の古都を読んで以来だが、面白かった。私自身は10年以上前に京都旅行に行ったが清水寺に行った事と鴨川に観光客が溢れかえっていた事以外は覚えていない。滞在したのも短かったのでまだまだ京都の奥深さは分かっていない。嵐山や祇園祭り、大文字焼き、知らない事が沢山あった。小説に実在する土地の文化や伝統を織り交ぜるのって本当にいいと思う。それが本書を読もうと思ったきっかけなのだが。綿矢りさは一流の作家である。彼女の本を読むのは初めてだが、現代を代表する作家だ。川端康成や谷崎が書いた古風な日本文学の伝統を綿矢が引き継いでいるように思う。しかし彼女の書く小説は現代が舞台なのであってそのギャップも面白い。伝統とモダンの融合。彼女が最年少で芥川賞を受賞したのも頷ける。一流の作家だと気付いた。手のひらの京の続編も期待したい。こういう本は実際に京都で生まれ育った綿矢だからこそ書けるのだと思う。

 

手のひらの京(新潮文庫)

手のひらの京(新潮文庫)