見沢知廉 囚人狂時代

  久しぶりの再読。今改めて通読してみてやはりこの本は物凄い。12年間の刑務所暮らしの記録である。ノンフィクションなのが驚きだ。こんな世界が本当に存在するのだろうか。とても衝撃的な内容だった。見沢さんのいう通り刑務所の中はダンテの神曲の地獄の世界。もう凄まじい。頭がおかしい囚人が沢山出てくる。長年の刑務所暮らしで頭がおかしくなったのが原因である。食事は不味いしトイレは臭い、担当者からの執拗ないびりだったり暴力、罵倒、理不尽な懲罰、医療もまともに受けれない。反省するためだと刑務官は云うが実際は囚人に人権が無いに等しい日本の刑務所の世界。これを読んだら間違いなく刑務所に入りたいとは思わないだろう。発狂した者、自殺した者、もう誰もが足を踏み入れたく無い禁断の世界。見沢さんは12年間も服役して刑期を全うしたのだからすごい。見沢さんは刑務官に反抗していたので昼夜独居房に入れられる。しかも8年間も。ただ狭い小部屋で一日中誰とも話さない生活を8年間もだ。日本の刑務所の劣悪さは西洋とは比べ物にならない。恐ろしいと思った。発狂しない方がおかしい。八王子医療刑務所での話は特に衝撃的だった。そこに収監される囚人は皆重度の病気を抱えている者だ。空気と会話する者や自分の大便で粘土を作る狂人。また出てくる人物が皆長期刑の極悪人ばかりだ。見沢さんが入った千葉刑務所は長期刑の重犯罪者の専用らしい。刑務所で知り合った犯罪者たちの罪状は殺人だったり銀行強盗、強姦、凶悪犯が多数出てくる。暗いノンフィクションなら笑えないが見沢流のユーモアがあり所々あって、笑わせてくれる。貴重な記録だと思う。旅行作家だったり恋愛小説を書くのが得意な作家、色んなジャンルがあると思う。見沢さんのような獄中生活をテーマに描いた作家は他にいない。文章も上手い。スラスラ頭の中に入ってくる。やはり見沢さんは偉大な作家だ。

 

囚人狂時代 (新潮文庫)

囚人狂時代 (新潮文庫)