再読 インドへの道

  インドへの道が書かれてもうすぐ100年になろうとしている。1924年に本書は書かれた。3年ぐらい前に読んだが細部まで詳しく覚えていなかったので久しぶりに再読した。何回でも読み直したくなるぐらいの面白さがある。

 現在はグローバルの時代だ。航空券が安くなったのもあるだろうが世界中、気軽に旅行に行けるようになった。スカイプとかラインのおかげで人との距離がぐっと近くなった。逆に人種間の衝突も増えたのも事実だ。そういう時代だからこそ本書は読まれる必要がある。残念ながらインドへの道は絶版になっていて入手しづらい。再版を願うばかりである。

 フォースターは100年前に既に東洋と西洋を結び付けるのを可能にしていた。インド人の親友がいてインドにも長期滞在して異文化かを理解する努力をしていた。本書もその大切な友人のために書かれたのだ。チャンドラポアという架空の都市でフィールディング学長とインド人のアジズの友情を見事に描いた。 アジズを信じているムア夫人。彼女はアジズの無罪を主張しムンバイにあるインド門からイギリスへと船で帰る。私はよく自分の旅行体験と小説の舞台を照らし合わせるのだが、(例えば罪と罰を読んでサンクトペテルブルクの街並みを散歩したり、トルストイの生家を訪れて戦争と平和が書かれた部屋を見て感慨深い気持ちになったり) 私も実際にムンバイのインド門を訪れた時の思い出をよく覚えている。立派な門だった。ムア夫人もここに居たのだろうか。彼女の目にインドは非常に興味深く好奇心に満ちた国に思えたようだ。

 私はファースターが好きな作家であると認めよう。ハワーズエンドから眺めの良い部屋。そして彼の集大成のインドへの道。イギリスで一番好きな作家もしれない。ハワーズエンドの方が一般的には彼の代表作だと認知されている。確かにあれもドイツ系とイギリス系をコネクトさせる物語だ。でも所詮、ヨーロッパ人同士なのでそんなに繋ぎ合わせるのは難しくない。彼はこの作品で作家としての地位を確立した。そして寡作だった彼の最後の小説が本書である。私のトップ10に入るお気に入りだ。人物描写、インドの建物、乗り物の象だったり、インドのマンゴーの木、フォースターのインドでの暮らしが生き生きと正確に描写されていて、とても優れた作家だと思う。並みの作家よりも頭一つ飛び抜けている。ハワーズエンドよりもインドを舞台にしたアジア人を物語の主人公にしたインドへの道を私は皆にお薦めしたい。