エレンディラ

 

 マルケスの物語の舞台はカリブ海沿岸が多い。なぜなら彼が幼少期に住んでいた祖父母の家がカリブ海沿岸の田舎町にあったからだ。マルケスの幼少期の体験が彼の物語に影響を与えたと言える。この短編集は6つの短編と1つ中編小説が入っているが、どれも面白いがやはり中編小説のエレンディラが1番良かった。お金に対して並々ならぬ執着心を燃やす祖母からの逃避行の物語だ。

 

 マルケスの作品の特徴は百年の孤独に代表されるようにマコンドという名の架空の土地を創造して沢山の人間模様を描いた事だ。別の小説の登場人物がまた別の物語に登場したりしてマルケスの物語の世界は全てが繋がっている。

 

 表題作の「エレンディラ」は不慮の事故で祖母の屋敷を全焼させてしまったせいで借金を背負わされた娘エレンディラの過酷な物語だが、エレンディラの逞しい性格が彼女の逆境を吹き飛ばす。祖母は彼女を売春婦として働かせて1日に何人もの男の相手をさせられる。その客の一人でウリセスという名の青年と出会いウリセスに協力をしてもらって祖母を殺害する計画を立てる。

 

 要するに過酷な労働を命令した祖母に復讐する、若しくは逃げる物語だがエレンディラの生命力の強さにはいささか感心した。マルケスの作風は現実と幻想が入り乱れたマジックリアリズムで有名だが、毒を含んだケーキを食べても死なない祖母の不死身性や彼女の血が緑色だったり現実の世界では起こり得ない事が起こるのが読んでいてとても面白かった。