2021-01-01から1年間の記事一覧

ドリトル先生航海記

ずっと前からこの本が欲しいと思っていた。実は文庫化するまで待っていたのだ。予想通り、文庫化されたので買った。翻訳者は生物学者の福岡伸一氏で新訳だ。イギリスの海洋冒険小説って本当に面白いよねってつくづく思う。同じ島国なのに内気な日本人とはえ…

狩りの時代

2016年、2月18日、津島佑子は亡くなった。彼女は死の直前まで書き続けていた。書くこと自体が生きることそのものだった。自伝的な要素が強い小説。津島が12歳の時に亡くなった3歳年上の兄の思い出と、差別の物語。そして大家族の物語だ。 少し整理してみよう…

安野光雅 絵の教室

安野氏の絵を知ったのは、ちくま文庫のシェイクスピア全集だった。表紙は安野氏のとても個性的な画でシェイクスピアの世界観を見事に描いている。 安野氏の絵がカラーで掲載されていて、とても有意義な読書だった。風景画が特に良いと思う。安野氏の故郷の島…

ドリトル先生アフリカへ行く

ヒュー・ロフティングのドリトル先生アフリカへ行くを読了。 まず第一に金原瑞人氏の翻訳は何時も読みやすい。 動物が沢山出てくるので動物好きの人は読んだ方がいい。 オウムのポリネシアから動物の言葉を教わったドリトル先生のアフリカへの航海記だ。 搭…

ジャック・ドフニ 海の記憶の物語 津島佑子

初めての津島佑子の作品を読む。タイトルに惹かれて図書館で借りた。抜群に面白い小説。でも知らない知識が多過ぎて辞書を片手に読み続けた。手強い読書だった。この小説を読む上で欠かせないキーワードは「アイヌ」「キリシタン」「マカオ」である。いつだ…

ちいさな国で

いや、傑作。ルワンダ内戦に関しての小説は今まで読んだ事がなかった。あっという間に読んだ。著者のガエル・ファイユの本職はラッパーと詩人というから驚き。非常に多彩な人物だと思う。 ブルンジをご存知だろうか。僕は今まで名前ぐらいしか聞いた事がなか…

藤田嗣治 手紙の森へ

とりあえず入門用に読んだ。 筆まめな人だった。 恋多い男だったフジタ。 異国での生活を愛したフジタ。 中南米も訪れたフジタ。 膨大な量の日記と手紙を書いた。 この人もヴァネッサ・ベルと同じように二つの大戦を生き芸術に人生を捧げた人だった。 本と本…

わが妹、ヴァージニア 芸術に生きた姉妹

一語一句、丁寧に読んだ。まるで彫刻や絵のような美しさがある文章。 初めてこの小説のタイトルを読んだ時は頭が混乱した。てっきり、タイトルから察するにヴァネッサの自伝ではないかと思った。しかし筆者の名前はスーザン・セラーズという方だ。英題は「Va…

百年の散歩

多和田葉子の「百年の散歩」を読了。空想好きの語り手がベルリンを散歩する。都会は刺激に満ちている。異文化のサラダだ。特にベルリンは世界有数のコスモポリタンシティーだ。著名な学者の名前がストリート名になっているベルリンでは多くの歴史や文化に触…

ブラッカムの爆撃機

ロバート・ウェストールの「ブラッカムの爆撃機」を読了。いやあ絶品。宮崎駿のカラー画に翻訳者はベテランの金原瑞人。何とも贅沢な作品。しかも大型の本なので宮崎駿の画をじっくり鑑賞できる。やはり活字だけでは物足りない。 タイトルの「ブラッカムの爆…

素晴らしきソリボ

パトリック・シャモワゾーの素晴らしきソリボを読了。カリブ海の文学だ。すごい。世の中、知らない事がまだまだ沢山ある。クレオール語は私にとって未知の言語だ。シャモワゾーはクレオール文学の草分け的存在だ。今も自分の故郷のカリブ海にあるフランス県…

雪の練習生 多和田葉子

厳冬の冬の日には寒い本を読みたくなった。今の季節にぴったりの本を読了。「雪の練習生」はホッキョクグマの物語だ。多和田氏の筆力というか創造力がすごい。三つのお話に分かれていて、一話目の「祖母の退化論」では引退したサーカスの曲芸師のホッキョク…

偶然 アンゴリ・マーラ

いや。圧巻。絶版になっているのが勿体無いぐらい面白い。偶然は帆船アザールの冒険とアンゴリ・マーラの二つの作品を収録しているが、両方ともカリブ海の国々を舞台にした小説だ。僕は断然、アンゴリ・マーラの方が好きだな。アザールの方は話がちぐはぐで…