アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」

 北海道の長万部という名の駅がある。読み方はおしゃまんべ。恐らくこの駅名はアイヌ語から来ている。

アイヌ文化の入門書。ゴールデンカムイの漫画付きなので読み易い。

 昔は交易が盛んだった。アイヌ人が狩猟で熊を狩り肉を和人と物々交換して着物を手に入れた。北海道全域はアイヌが住み、現地ではアイヌ語が話され日本語を話せない人がいた。日本は明治時代に和人が北海道のアイヌ人を日本人と同化する以前まではとてもグローバルな世界だった。

日露戦争直後のアイヌの人口は約一万八百人。それから徐々に減っていく。アイヌ語自体はもう死後に近い言語だ。でもアイヌ文化やアイヌ語を復興しようという動きがある。

 北海道に留まらず、千島列島や北方四島南樺太までアイヌが住んでいた歴史がある。ここまで来ると混血が進んで非常に多様な人種が住んでいた。例えばアシリパの父のウイルクはポーランド人の父と樺太アイヌの母を持つ。シベリア流刑で極東まで送られてポーランド人だ。だからこの漫画の主役のアシリパは青い眼を持つ。漫画なのでフィクションだが、でもロシア系だったりアイヌ系のハーフは恐らく存在したと思う。

 アイヌ人の熊を崇める習慣がとても興味深い。アイヌに人々にとって野生の熊は信仰の対象だ。厳しい冬の寒さを乗り越える為の毛皮を熊は与えてくれる。そして熊の肉はアイヌ人にとっては必要不可欠だった。だから熊に感謝する。熊の頭を切り取り担ぎ盛大に祝う。アイヌの人々は宗教的な考え方をしている。自然の恵みを大事にして環境を敬う。