血みどろ臓物ハイスクール

 

 基本的に文学で生計を立ててきた人は圧倒的にアウトローが多い。古くいえば掌編小説で有名なO・ヘンリーは経済関連の罪で服役している。ドストエフスキーは非合法の集まりに参加した罪でシベリア流刑だ。

フランスの作家のジャン・ジュネなんて軽微な罪だが何回も逮捕され警察のお世話になった。日本でいえば太宰治は愛人と一緒に心中したり、それはもう破滅的な生涯を送ってきた。文学は反逆者の味方だ。反骨心だけでひたすら書いてきた。そういう作家にキャシー・アッカーという人がいた。彼女もクレイジーだった。入れ墨を入れてスキンヘッドでバイクに乗って。この本を読んだ率直な感想は彼女は狂人だと思った。

 少女のジェイニーには母親が死んで父親と二人きりでメキシコのメリダに住んでいる。父親とは近親相姦の関係だ。父親は愛人のサリーと二人きりになりたいのでジェイニーをニューヨークへと追いやる。独りぼっちのジェイニーはニューヨークの地元のサソリ団という名の不良グループとつるみ飲酒、ドラッグ、セックスと荒廃した生活を送る。

 ある日、13歳になったジェイニーは黒人と白人に拉致され売春部屋に監禁される。そこで出会ったホーソーンの「緋文学」に感銘を受ける。緋文学は姦通小説で有名。反道徳的な生き方のジェイニーにこの本のヒロインのヘスターが乗り移る。彼女はニューヨークを去り希代のアウトロー作家のジャン・ジュネに会いにモロッコへと向かう。意気投合した二人は一緒にエジプトのアレキサンドリアに向かう。

 詩、絵、劇作、多様な文体を駆使して物語は進む。ジェイニーの誇大妄想がすごい。ジュネとの会話や、ヘスターの独白は彼女の妄想だった。時に非常に繊細になったり気分の浮き沈みが激しく読む側も結構吃驚すると思う。こういう作家は今はもういないと思った。新鮮な読書体験だった。文庫化に感謝。

 

血みどろ臓物ハイスクール (河出文庫)

血みどろ臓物ハイスクール (河出文庫)