ノーザンライツ 星野道夫

アラスカで18年間暮らした星野道夫の現地での人との出会いと見聞の記録である。

まずアラスカと思い浮かべてどんなイメージが湧くか。私のアラスカの印象はアメリカがロシアから買った広大な土地。そこには荒れ果てた土地が続き自然が手付かずのまま残っている。それぐらいしか知らなかった。実はアラスカは大昔にはユーラシア大陸と陸続きで繋がっていたのだ。この人口過疎地でもある極寒の地域には美しいカリブーと呼ばれるトナカイが生息している。エスキモーと呼ばれるモンゴロイド系の先住民とインディアンが自給自足の生活をしている。

星野はアラスカ中を飛び回り多くの現地の人々と交流を広げ親交を深めていく。この作品は事実ではあるが何か神話を聞かされているような幻想的な美しさがある。星野自身はカムチャッカ半島で熊に襲われ急逝したが、それで彼が伝説的な人物になっている気がする。星野は永遠に生き続けているのではっと錯覚を起こす。アラスカの大自然と人との出会いが彼を人生を変えた。星野の親友のアメリカからアラスカの大自然に魅了されて来たジニーとシリア。全く異なる環境で生まれ育った彼らだが、アラスカを心の底から好きだという気持で繋がっている。アラスカの核実験化計画を阻止するために立ち上がったジニーとシリア。エスキモーの人たちと皆が協力してアラスカの自然を保護する為に反対して核実験化計画は幻に終わった。星野は写真家としても才能がありこの作品には多数の星野がアラスカで撮った写真が収録されているがそのどれもが美しい。このような作品は色褪せる事なく永遠に読み継がれていくだろう。

 

ノーザンライツ (新潮文庫)

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