ヤマザキマリの偏愛ルネサンス美術論

久しぶりの新書。ヤマザキマリの著作はこの本で二冊目。いや内容が濃い。ミケランジェロからラファエル、ダヴィンチ、ダンテまで登場する人物評である。冒頭にはカラーの画像もあるので大変満足。

白黒の画像も多数収録。どこかで見たことがある画があってでもはっきり説明できないっと思っていたが、謎が解けてスッキリした心境。登場人物が多過ぎて誰がどの画や建造物を作ったのか曖昧だが、全体を通して非常に読み易い。ヤマザキマリ氏の文章は明快でお堅い解説ではないので良かった。

色々気付いた事もあった。

昔はテレビも無く当然インターネットもないので画が情報の媒体となっていた。

ルネサンスとは再生という意味であり日本語で克己がその意味に近い。

ダンテはイタリアの国語でありダンテなしではイタリア語は存在しなかった、それぐらい偉大な存在だ。

シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」はイタリアのヴェローナを舞台に繰り広げた物語でダンテの生きた時代が関係している。

やはりイタリアは歴史の国で芸術の国だなと思った。フィレンツェって昔は独立国で相当な文化的な影響力があった。私はフィレンツェは一度訪れたことはあるけど、絵画の世界に飛び込んだような錯覚を起こすぐらい美しい都市だった。イタリアは世界遺産の数も世界一なのも頷ける。画と同様に建造物も素晴らしい。本書に掲載されている「ヴィラ・ロトンダ」という名の建物が立派で驚いた。

ダ・ヴィンチモナリザは有名だか、彼は解剖学やら植物学にも精通していた多才な人であった。

いや本書を片手にもう一度イタリアを旅したくなった。

まずヤマザキマリ氏の経歴がすごい、たった17歳で一人でイタリアに渡り絵画の修業を積み、シリア、ポルトガル、エジプトに住み移動する生活を送ってきた紛れもなくグローバル人間だ。私のような弱々しい性格では到底考えられない。その分、彼女のようなライフスタイルには憧れがある。現在はイタリア北部に住んでおられるようだが、イタリアには特にルネサンス期には多様性と寛容があると筆者は言う。知性とか感性を養うには人文学的な学部が必要でその寛容さがルネサンス期に沢山の芸術活動を支えていた。勿論、科学的な知識も必要で理論家の画家も沢山いる。

ヤマザキマリ氏の著書は本書が一番好きだな。本書で得た新しい知識は私の人生をより豊かにしてくれると思う。今までにない楽しい美術論だった。