奇食珍食糞便録

 椎名誠の著書を初めて読む。まさかこんなにユーモアがあって面白い人だったとは思わなかった。まずタイトルのインパクトが凄い。糞便録なるパワーワードを初めて聞いた。世界のトイレ事情を綴った本だ。内容の3分の1は世界の珍しい料理について。

 私も海外のトイレに戸惑った事が何回かある。東南アジアでは使った紙は流さずトイレの横にあるゴミ箱に入れるのが当たり前だ。インド(東南アジアも含めて)ではトイレにシャワーノズルが付いていてそれでお尻を洗い流す。中国では世界遺産の建物や博物館にもトイレはあるがトイレットペーパーが無くて困った事が何回かある。だから私はティッシュペーパーを念のため持ち歩いているのだが。世界は日本ほど恵まれてい無いのだ。

 以上が私の旅行中のトイレエピソードだが、椎名氏のエピソードは私と比べ物にならないくらいすごい。私は臆病なので基本的に都市部しか観光しないが、椎名氏は僻地に行く。決して一般の旅行者が立ち寄らない地域。だから本書の内容はもう抜群に面白い。非常に冒険心の強い人なのだ。極東ロシアの凍った糞便や中国のニーハオトイレ(仕切りがなく外から丸見えのトイレの事)の話は思わず私も笑ってしまった。糞便というと下品に聞こえるが、東南アジアでは川に糞便をしてそのまま魚の餌になってそれをまた人間が食う。見事な食物連鎖だ。本書は新書サイズで目が疲れなく挿絵も付いていて非常に楽しい読書体験だった。一冊の本に糞便ときて後半の奇食、珍食については食べる行為と出す行為が繋がっていて上手いなと思った。椎名氏の熟練した旅行家だからこそ書ける文章だと思う。

 

奇食珍食 糞便録 (集英社新書)

奇食珍食 糞便録 (集英社新書)

  • 作者:椎名 誠
  • 発売日: 2015/08/12
  • メディア: 新書