9つの人生 現代インドの聖なるものを求めて

 

 ものすごい濃い一冊。知らないことが沢山あった。どこから書けばいいのか分からなくなるぐらい濃い一冊。ブルース・チャトウィンの系譜を継ぐ紀行文学の傑作。

 

 著者のダルリンプルはインド中を隈なく旅をした。砂漠地帯の乾燥した土地の北インドのラジャスターン州から南インドベンガル人が住むコルカタ南インド、そしてインドだけではなくパキスタンにも行く。ただ旅するだけではなく多くの現地の人と会い話を聞いた。出てくるインドの人々はとても信仰深い。出てくる宗教はヒンドゥー教ジャイナ教、仏教、イスラム教、多くの信仰がインドには存在している。だから宗教対立もあった。その結果、インドからイスラム教のパキスタンが離れて、バングラデシュが誕生した。

 

 宗教ってこんなに寛大なのかと吃驚した。チベットからインドに亡命してきたある僧侶はインドの軍隊に加わり、バングラデシュで人を殺めた過去を持つ。その贖罪の為に信仰の道を選んだ。彼はインドは仏教の聖地なのでブッダガヤなどの仏教にゆかりのあるインドの土地を旅した。巡礼の旅だ。仏教では憎しみや怒りの感情は大罪である。そして自分の中の欲望に打ち勝つことだ。結局のところ、最大の敵は自分自身である。禁欲することだ。インドの信仰はトルストイの思想にも共通しているなと思った。トルストイは若い時は情交に耽っていたが徐々に禁欲的な生活を送るようになった。トルストイは肉欲はやがて自らの破滅を招くといった。インドの宗教では自分の中に神を見い出すのだ。その為に厳しい修行に耐える。神は寛大ではあるが時に非情なまでに厳しいのだ。一人、山奥に篭り瞑想する、断食は当たり前。特にジャイナ教は病気になって倒れるまで断食する。そしてインドの神を信じる人々はインド国内を旅する。勿論資金はない。だから喜捨を得る。雑念を追い払うには旅に出るしかない。

 

 ここまで私はインドに惹かれるのは分からないが、やはりインドが好きなのだ。これからもインド関連の本を読みたい。