トーマスマン 魔の山 再読

 魔の山は私の読書遍歴の中で特に好きな作品だ。 だから今回再読する事にした。最初は高橋義孝氏が訳した新潮文庫で読んだが、今回は岩波文庫で読んでいる。名著は数多くの翻訳があるので自分にあった翻訳者を見つけて読めるのがいい。実をいうと今ドイツのミュンヘン魔の山を読んでいる。オクトーバーフェストでも有名なとても洗練された都市だ。マン自身も長くミュンヘンに住んでいたので魔の山はこの地で書かれたのだ。マンの芸術的なセンスもミュンヘンの街で磨かれたのだろう。

 主人公のハンス・カストルプは友人のヨーアヒムを見舞うために3週間の期間だけスイスのダボスの山奥にある療養所で生活する事になる。短期間の予定だった滞在だったがカストルプ青年がレントゲンの診察を受けた結果、彼自身にも病巣が見つかり徐々に入院生活が延びていく。この療養所を舞台に教養主義者で文学者のセテムブリーニやカストルプ青年が想いを寄せるショーシャ夫人や多くの個性的な人物と出逢い人間的に成長していくのだ。

 マンの生きた時代は激動の時代だった。ヒトラーが政権を握ると反ナチスの立場を示していたマンは国籍を剥奪された。アメリカ移住後もヒトラーナチスを打倒する声明を発表する。その後マンは二度とドイツに足を踏み入れる事は無かったが彼は終生、伝統的なドイツ文学にこだわっていた。魔の山にもゲーテの作品の引用があるのでうかがい知れる。

 私自身、集中力と体力が足りず非常に遅読なのでゆっくり下巻も読んでいくとこにする。下巻も700頁近くある大著なので読むのが楽しみだ。

 

魔の山〈上〉 (岩波文庫)

魔の山〈上〉 (岩波文庫)