素数たちの孤独

 普段、私はあまり恋愛小説は読まないが本作は読み通すことが出来た。基本的に飽きっぽくて忍耐力が足りないのでつまらない本だったり難解で理解出来ない本は途中で放棄する癖がある。だから私が読破出来た本はそれだけで素晴らしい本という事になるので必ずブログに紹介するようにしている。

 アリーチェは小学生の時にスキーで怪我をして片足に歩行障害まで残った女の子だ。不良グループのヴィオラに憧れていて彼女と友達になりたがっている。マッティアは賢くて数学に対して並外れた才能を持っているが少し風変わりで内向的な少年だ。過去に彼の行動が原因で双子の妹が行方不明になる事件があった。アリーチェの親子関係はあまり良くなく不幸せな印象を受ける。一方のマッティアも学校で友達が出来ないので両親は悩んでいる様子だ。ある日マッティアの転校先でアリーチェと出会う。そしてヴィオラの誕生日パーティーでのある出来事をきっかけに二人は交際する。物語は月日と共に進んでいく。頭脳明晰なマッティアは大学卒業後に北欧からの教職のオファーを受けイタリアを離れることになる。アリーチェは余命宣告された病身の母親の入院先で医師のファビオと出会いそして結婚する。こうして二人は離れ離れになるがお互いに忘れられずにいる。数年後にアリーチェから手紙を受け取ったマッティアはイタリアに一時帰国する。久し振りの再会を果たした二人はひと時の時間を楽しんだ。そしてそれぞれ自分たちの道を歩む事になる。最終的に二人は結ばれることのない物語だが悲劇的な結末でもない。物語は淡々と進んでいくのでとても現実的な恋愛小説だといえる。

素数たちの孤独 (ハヤカワepi文庫)

素数たちの孤独 (ハヤカワepi文庫)