母をお願い

 申京淑は韓国の女流作家だ。韓国では母をお願いは580万部の大ベストセラーとなり世界中で翻訳され日本でも出版された。読んでいて韓国は苦悩の国だなあとつくづく思った。トルストイドストエフスキーの作品のように心理描写が非常に多い。田舎から上京して来たオンマ(母親)はソウル駅で夫とはぐれ行方不明になってしまいオンマの家族が捜索するところから物語が始める。娘と息子と夫の立場からどれだけ母親が偉大な存在であったかが語られる。最後の結末もそうだしストーリーの展開も決して明るくはないがこの本を通して韓国の文化、生活が少しわかったので本書に出会えてよかった。

母をお願い (集英社文庫)

母をお願い (集英社文庫)


松本清張 点と線

 身体中治療をしているせいで、旅行に行きたくても行けない。結局、今、皮膚科、心療内科、整形外科、歯科、肛門科に通院している。正直に言ってただ単に自己管理が出来ていないダメ人間なのである。最近は挿画入りの小説を読む事が多い。今回も挿画付きの大ベストセラーの点と線を読んだ。ミステリーはあまり読まないが風間完画伯による美しい画があったからこそ読破出来たといってもいい。もう少し松本清張の作品を漁ってみようと思う。

巨匠とマルガリータ

 読み始めたら止まらない。そんな面白い小説である。池澤夏樹の世界文学全集で初めて「巨匠とマルガリータ」を知ったのだが、今まで読んできたロシア文学とは違う全く新しい奇想天外小説だと思った。ラテン文学のマジックリアリズムに通じる非日常的な面白さがあった。モスクワを舞台に箒にまたがり縦横無尽に空を飛ぶ女主人公のマルガリータや悪の魔術師ヴォランドの手下の黒猫のベゲモートの暴れっぷりは読んでいて楽しかった。ロシアでは映画化や舞台化もされているし世界各国で翻訳され多くの人々に愛読されているので世界文学に相応しい作品だと思った。というより池澤夏樹氏の影響力が強過ぎて彼の紹介している作品しか最近は読んでいないのでちょっとまずい。自分自身で選んだのをブログに載せなければ。

戦争は女の顔をしていない

  スヴェトラーナ. アレクシエーヴィチの処女作で彼女の代表作である。ヨーロッパでは舞台化もされている。ソ連では第二次世界大戦中に戦った女が多数いた事はあまり知られていない。戦争を体験した女性達から話を聞いたインタビュー集である。 職業は兵士や看護婦、パルチザン、調理師等、様々である。正直読んでいてとても苦しかった。独ソ戦では想像を絶する凄惨な殺し合いが行われたのだ。ある女性は自分の赤子の泣き声で自分たちの隠れ家が敵に見つからないように仕方なく赤ん坊を窒息死させたものや、敵兵を七十五人を殺害し表彰された狙撃兵や、敵兵に捕らえられ拷問を受けてトラウマを持った人、戦場で家族全員を失った人。戦場で足を失って帰ってきた帰還兵はまだマシな方で、臓器が飛びだし激痛の中死んだ兵士や戦場で目や耳を失い重度の身障者になった人がいたのだ。
これは作り話では無く実話だと思うとショックを受けた。これ程戦争は悲惨なのかと。戦争の犠牲は余りにも大きすぎるのだ。読むには苦悩を伴うがそれでも読んでよかった。

戦争は女の顔をしていない (岩波現代文庫)

戦争は女の顔をしていない (岩波現代文庫)

ロシアの絵本

 去年、ロシアに行った時にエルミタージュ美術館のお土産屋さんでロシアの絵本を買った。童話の短編集である。絵の色使いがとても鮮やかで見ていた癒された。ロシアの物語では末っ子が主人公になる可能性が高いと思った。

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ジョン・レノンが見た日本

 ジョン・レノンが日本語を勉強していたことは知られているが本書はジョンが日本語を勉強した時に書いたスケッチ集である。ジョンのことは割と私は詳しい方である。毎年年末に開催されているオノヨーコのスーパーライブにも行ったことがあるし(彼女の雄叫びも生で聞いた) 、ニューヨークのダコタ・ハウスにも行った。ジョンの前妻のシンシアが書いた「ジョンレノンに恋して」も読んだ。素顔のジョンがわかるとても面白い評伝なのに未だに文庫落ちしないのか謎である。

 ビートルズのメンバーでもあり解散後は自身の名義でイマジンや労働者階級の英雄などの名曲も生み出した。そのような偉大な人物が日本語を勉強していたのである。ヨーコに謝罪に意味を込めた曲「Aisumasen」もジョンが日本語に興味を持っていたことがわかる。ヨーコの別荘がある軽井沢にも
半年程滞在していたし日本文化にも積極的に学ぶ姿勢を持っていたとされる。そんなジョンのユーモアのセンスが溢れるスケッチである。今後は2人目の妻のヨーコから見た評伝が出される事を期待したい。


Ai ジョン・レノンが見た日本 (ちくま文庫)

Ai ジョン・レノンが見た日本 (ちくま文庫)

ジョン・レノンに恋して

ジョン・レノンに恋して


チェルノブイリの祈り

 スベトラーナ・アレクシエービッチのチェルノブイリの祈りを読了。スベトラーナは2015年のノーベル文学賞受賞作家である。ドキュメンタリー作家、ジャーナリスト作家の初の受賞といっていい。本書はチェルノブイリ原発事故の実際の被害者へのインタビュー集である。放射能の人体への悪影響ははかりしれない。

チェルノブイリの祈り――未来の物語 (岩波現代文庫)

チェルノブイリの祈り――未来の物語 (岩波現代文庫)