背徳の人

アンドレ・ジッドの背徳の人を読了。ジッドの処女作である背徳の人は出版当時は不評だった。タイトル通り、キリスト教の教えに背く内容だからだ。主人公のミシェルは妻との新婚旅行で北アフリカ、イタリアを旅するが、ミシェルは妻を顧みずにアラブの少年に夢中になる。妻が死産したり病気になってもやはり自分勝手に行動する。挙句の果てには妻が危篤の時にはミシェルが好意を抱いていたアルジェリアの少年のお気に入りの情婦と交わる。行為が終わりホテルに戻ると妻は既に息絶えていた。だが本書は自伝ではない。ミシェルはジッド自身であると批判を受けたため弁明するためにジッドは序文を追加して書いた。読み物としては大変面白かったと思う。でも道徳的にかなり問題があったため不評だったのだ。

本書は三章から成り立っている。

 一章では新婚旅行で妻のマルスリーヌと一緒にアルジェリアとイタリアを旅する。病気を患っていたミシェルだったがは北アフリカの温暖な気候のおかげで徐々に回復する。アラブの美しい少年たちとの出逢いミシェルはとても幸せだった。特にミシェルのお気に入りの子はモクティールという少年だ。モクティールに自分のハサミを盗まれても彼は見て見ぬふりをして許してしまう。

 二章では自宅のあるパリに戻り学者であるミシェルは大学での講義と古代文明の研究をする。しかし仕事は捗らずパリの豪華な自宅で客人を招きサロンを開くが妊娠中だったマルスリーヌの体調は良くない。パーティーは開かず妻の面倒を見始めるが遂にマルスリーヌは死産してしまう。

三章では子供を失った悲しみを癒すのと妻の病気の回復のために再度北アフリカへと旅に出かける。途中、パリから南下してスイス、イタリアと渡っていき北アフリカに到着するが妻の容態がミシェルの希望とは裏腹にますます悪化していく。久しぶりにモクティールと出会い彼と夜中に遊びに出掛けてる間にホテルで妻は亡くなっていた。

 

背徳の人 (ちくま文庫)

背徳の人 (ちくま文庫)