闇の奥

 

 新訳感謝。コンゴ・ジャーニーに続いてコンゴ川を舞台にした闇の奥を読了。コンゴ民主共和国の首都のキンシャサキンシャサコンゴ川沿いにある大都市だ。そして対岸にはもう一つの国のコンゴ共和国の首都のブラザヴィルがある。こちらの都市も大都会だという。コンゴ川を挟んで二つの国の首都が向かい合っているなんて面白い。いつか訪れてみたい。夢を諦めない。

 

 幾多の作家がコンゴ川の大密林に魅了されて現地に訪れた。作家のコンラッドアンドレ・ジッド、

コンゴジャーニーのオハンロンたちがコンゴ川を探検した。コンラッドの闇の奥はコンラッド自身の実体験が物語のベースになっている。彼は20年以上世界中を航海したベテランの船乗りだ。

 

 正直に言って闇の奥のストーリーは暗くてジメジメしていて陰鬱だ。コンラッド自身とても気難しい人だなと思った。ドストエフスキーに近い性格。

 

 人種差別的な描写が結構ある。1900年当初に描かれた小説なので今と比べると人種平等の世界では無かったのだ。文明化を目的と言ってアフリカで辛辣に振る舞う西洋人たち。実際の目的は象牙などの自然資源の収奪が目的だった。アフリカ人へのリスペクトが全くない。後年、ナイジェリアの作家のアチェべが闇の奥を読んでコンラッドを人種差別主義者と糾弾したが、そう思われても仕方がない部分がある。アフリカ人の事を蛮人や人喰い人種と呼び蔑むコンラッドの文章は行き過ぎている気がした。語り手のマーロウ自体がコンラッドの分身なのだから。鉄道工事で酷使される黒人労働者や家の周囲に黒人の頭蓋骨を並べていた白人大尉。

 

 タイトルの闇の奥は二つの意味があった。鬱蒼と生い茂る密林の中を流れるコンゴ川の奥深く上流を目指す船旅と西洋人たちの現地での残酷な振る舞い。19世紀末のアフリカの植民地支配の現実の姿をコンラッドは描いたのだ。