「十五少年漂流記」への旅 幻の島を探して

 

 椎名誠の読書量には驚かされる。彼の人生に決定的な影響を与えた本は子供時代に読んだヴェルヌの「十五少年漂流記」だったという。そこから彼の世界中の未知なる国に訪れる好奇心が生まれた。冒険好きなのだ。僕もそうだが、読書と旅行が好きな人は幼稚な人が多い。池澤夏樹さんもそうだし椎名誠も。シーナはヴェルヌを敬愛していて特に「十五少年漂流記」は何回も読んでいるそうだ。後に娘と共訳でシーナ親子の十五少年漂流記が新潮社から出版される。

 

 彼の好きな読書の分野は冒険記と探検記、漂流記。スケールが兎に角大きい。今回のシーナの旅で今まで漂流記のモデルとされていた南米のパタゴニアハノーバー島にまで足を運び、日本の田辺教授がヴェルヌの漂流記について論文で発表して新たにモデルになった可能性のあるニュージーランドのチャタム島を訪れる。日本からアメリカ、チリ、パタゴニアまで移動して、チリからニュージーランドまで移動するスケールの大きい壮大な旅だ。読んでいてとてもワクワクする。

 

 この本は田辺教授の論文へのアプローチであり学術的な論考だ。本書の中でノンフィクションと小説を問わず沢山の冒険記、漂流記に言及する。シーナの知識の豊富さに僕は圧倒された。ただ旅人はなく、とても思慮深い人だと思った。現地に訪れ、深く考察する。

 

 まず前半はパタゴニアの旅で後半はニュージーランドの旅だ。実際にハノーバー島に訪れる。ハノーバー島はそもそも近くに沢山の無人島があって孤島とは言い難い。少年たちが生き残っていく為には大変で荒涼とした土地だった。そしてチリからニュージーランドに移動して今度は田辺教授が実際の漂流記のモデルだと指摘するチャタム島を訪れる。シーナは少年たちが漂流したチェアマン島の地図を参考にして改めて実際のモデルはチャタム島だっと結論づける。チャタム島には漂流記で出てくる島の内陸に流れる湖、ラクーン(潟湖)があった。