イルカの島

 

 この小説は1963年に書かれたが全く古臭さを感じさせず新鮮な面白味がある。やはり名作は色褪せない。

海洋SFは珍しいジャンルだがクラークはやはり王道のイギリス小説を踏んでいると思う。夢がある。まずホヴァーシップという名の海に浮遊する近未来的な船に少年のジョニーが密航するところから物語は始まる。面白い。ワクワクする展開だ。船が沈没して遭難したジョニーはイルカたちに助けてもらった。

 

 連れて行かれた先は何とイルカの島だった。イルカの研究が行われている珊瑚礁に囲まれた多くの海洋生物が生きている島なのだ。オーストラリアの海域にあるグレートバリアリーフにある無数にある孤島のどこかにイルカの島は存在している。教授のカザンは密航してきた少年にイルカ研究の手伝いをしてもらう。てっきり自分の国に強制帰国だと思ってたジョニーにとっては幸運だった。

 

 意志の疎通が出来るイルカのスージースプートニクがジョニーの友人だ。イルカは知能の高い生き物で人によく懐くといわれる。ジョニーに擦り寄ってきて撫でてもらい現地民のミックよりもスージースプートニクと仲良くなってしまう。ちょっとミックはジョニーに嫉妬しているが彼とはやがて親友になる。

 

 ジョニーとミックが夜の珊瑚礁を探索する場面が特に美しい。懐中電灯に群がるプランクトンの群れや穴に隠れているロブスターやウツボ。暗い夜の海には何が潜んでいるのだろう。まだ潜るのに慣れていないジョニーはミックみたいに外海に出る事はない。でも色鮮やかな珊瑚礁の周りを歩き回るだけで楽しい。浅瀬にもカニや多くの生き物が住んでいる。

 

 ある夜、島に嵐がきて島は孤立無援になってしまう。救助を呼ぶためにジョニーはイルカと共にオーストラリアに向かう。

 

 期待してた以上によかった。特に後半は一気に最後まで読んだ。ディズニーの映画になってもおかしくないような幻想的な美しさがある物語だった。