幽霊塔

 

江戸川乱歩の幽霊塔を読了。

最初は分からない事だらけ。謎めいた美女の野末秋子、彼女は長い手袋をはめて左手を隠している。何か秘密があるのだ。彼女は大変な過去を背負って生きている。ある者に弱みを握られて生きているので決して幸せな立場ではない。彼女を救うのは実直な青年の北川光雄。

 

幽霊塔に纏わる怪談がある。過去に養女によって殺された老婆の幽霊が出るという。そして地下には幽霊塔を建てた大富豪の財宝が眠っているという。ちょっと最初は情報量が多くて何が何だが分からなくなった。途中で最初の方を読み返したりした。

 

読み進めていくと少しずつ謎が解けていく体裁をとっている。だから先の展開が気になって仕方がなかった。江戸川乱歩は読者を物語の世界に引き込むのが上手いなと思った。ラストは全てが明るみになる。中盤辺りから最後までは一気に読んだ。納得の最後。

 

 

宮崎駿の絵が僕の想像力を補ってくれた。物語のヒロインの野末秋子の絵がいい。時計塔の機械室に佇む秋子の姿は確かに僕のイメージ通りだ。和服を着ていて冷静で上品な姿。

 

宮崎駿は少年時代に江戸川乱歩の熱心な読者だった。幽霊塔はジブリ映画の雰囲気もある。迷路があって罠があって財宝のありかを示す暗号があって歯車があってとてもワクワクしながら読んだ。宮崎駿はそのまま幽霊塔を映画化するのではなく「ルパン三世 カリオストロの城」という彼なりの幽霊塔を作った。僕はカリオストロの城も観たけど、時計塔から美女をルパンが救う設定は宮崎駿の幽霊塔だ。