カフカ 城

 長い読書だった。カフカの一番長い小説である城を読了。数年前に一度挑戦したが、フリーダと学校の教室で寝込む箇所で挫折したのだ。でも今回は何とか読破。測量士であるKはある村に派遣されたがいつまで経っても目的地である城にたどり着けない。松岡正剛氏は城の読後感は何も残らない。しかしそれがカフカなのであると評したが確かに未完の作品なので結局何も分からずじまい、一切の伏線を回収しないまま物語は唐突に終わってしまう。カフカの作品は一般的に不条理小説と云われているが、お役所的な煩わしさに翻弄されて目の前に城があるのにも関わらずいつまで経っても城に入る許可が下りない真に不思議で非合理な世界だ。縉紳館、橋屋、学校をたらい回しにされたKは自分の義務を果たすために城の役人と接触を試みるがことごとく失敗に終わる。まず第一に城のクラム長官に仕事を依頼されたKだが村長の手違いで実際には測量士は城に必要無かったのだ。クラムの愛人であるフリーダとKが恋仲になって彼女は働いていた酒場を首になり追い出されてしまう。学校の教室で暮らす事になったが二人だがKが外出中にKの助手であった男とフリーダは恋愛関係になってしまう。Kもエルザという城で働いているバルナバスという男の姉妹に好意を抱くようになる。フリーダの代わりに酒場で働くようになったペーピーもKと一緒に暮らそうと告白する。村長や宿屋の女将さん、在村秘書との会話で城の旧態依然の官僚システムの全貌を掴んだKだが結局最後まで城に出向く事は無かった。登場人物のそれぞれに思惑や勝手な憶測があるのでそれはそれで大変面白かった。城は長く読み継がれている傑作だが登場人物も多くまた600頁もある長編なので一回読んだだけでは細部までよく分からなかったというのが本音だ。再読しないといけない。

 

城 (新潮文庫)

城 (新潮文庫)