ハワーズ・エンド

  フォースターのハワーズ・エンドを読了。いやあ面白かった。久し振りに読破できた本に出会えた。20世紀初頭にはイギリスから優れた小説が沢山誕生したがフォースターの作品もその一つだ。題名のハワーズ・エンドとはロンドン郊外にそびえ立つ邸宅の名前で物語のキーポイントになる場所だ。ドイツ系のシュレーゲル姉妹と資産家のウィルコックス家の人間関係を描いた物語だ。実質的な主人公はシュレーゲル家の長女のマーガレットで彼女の成長を読者も見届けることになるだろう。フォースターは階級や人種の違う人間同士の衝突や結び付けを描くのが実にうまい。それは彼自身の旅行経験や育ちに影響しているようだ。著者の経歴に少し触れると、フォースターは建築家の息子としてロンドンで産まれた。そして典型的な上位中産階級の家庭で育った。彼の生い立ちからすれば上の人間も下の人間も客観的に見ることが出来た。本書も中産階級のシュレーゲル家と地主である上流階級のウィルコックス家との階級差による隔たりをどうやって乗り越えて一つになるかをフォースターは書いたのだ。彼の代表作である「インドへの道」も人種間の問題を取り上げている。元々旅行好きだったフォースターはイタリア旅行の経験を下敷きに「眺めのいい部屋」を書き、インドにも複数回、足を運び「インドへの道」を上梓した。フォースターはヴァージニア・ウルフのブルームズベリ・グループのメンバーでそこでの集いでウルフ姉妹や他の知識人たちと大いに芸術や文学について話し合った。私が察するに討論好きだった人だと思う。本書は私の本棚にずっと残しておきたいと思う小説だ。

ハワーズ・エンド (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-7)

ハワーズ・エンド (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-7)