夜間飛行

 サン=テグジュペリの夜間飛行を読了。最近、チャトウィンパタゴニアを読んだが作中でこの作品に触れる箇所がある。夜間飛行はパタゴニアでの郵便飛行機を描いた作品だ。新潮社の翻訳はかなり古い。だから光文社の古典新訳を選んだ。素晴らしい翻訳。言葉のセレクトも非常にセンスがあると思った。新しい事にチャレンジするのはリスクを常に伴う。夜間の郵便飛行はまだ実験段階だ。鉄道や車に負けない方法が必要だからだ。パタゴニアやチリからの郵便物を中継点のブエノスアイレスに持っていってから深夜にヨーロッパに届ける。著者のサン=テグジュペリも心から飛行機を愛していたのだろう。天空の城ラピュタのような雰囲気がある。大雨と暗雲、霧と大嵐の中、その上深夜で目の前が何も見えない。エンジンも底を尽きている。しかし着陸せずに逆に謎の光を追い求めて高く上昇する。雲の中を抜けると静謐な光に包まれた見たこともない世界に辿り着く。一体、パイロットはここは何処なのかといぶかしる。そしてパイロットからの無線連絡は途絶える。宮崎駿は本書を読んで天空の城ラピュタの着想を得たのだろう。とても不思議で未知の世界への憧れとか夢がある。星の王子様は完全に児童文学向けの物語だったが夜間飛行は何歳になっても読める作品だと思った。

 

夜間飛行 (光文社古典新訳文庫)

夜間飛行 (光文社古典新訳文庫)