魔法の樽

バーナード・マラマッドの魔法の樽を読了。短編集だがどの作品も非常に面白かった。翻訳は新訳だそうだそうでとても読みやすかった。マラマッドの作品は今まで何回も訳されていて多くの翻訳者たちが彼の作品を褒め称えている。本作家に限ったことではないが、名作はというのは多数の訳書が存在する傾向がある。本書を読むには作者のバックグラウンドを知る必要ある。マラマッドはニューヨーク出身でユダヤ系の移民なので、物語の多くはニューヨークが舞台だったりユダヤ人が何回か登場する。イタリアを舞台にしたユダヤ人女性との恋愛を書いた物語は特に好きだ。イタリアの美しい街並みが想像出来きる。最後は驚くような秘密が彼女から告白され、主人公のユダヤ系の青年はショックを受けるが決して悲しい結末ではない。マラマッドの作品の特徴は物語の途中で謎が出てきて最後にその謎が明かされるので全部読みたくなってくる。読者の心理を突くのが上手い作家である。

 

魔法の樽 他十二篇 (岩波文庫)

魔法の樽 他十二篇 (岩波文庫)