本を読む人

今年最初の本だ。いい本を読んだ後の読後感に浸っている。パリ郊外に住んでいる貧しいジプシーの大家族は母1人、成人した子供5人、その嫁の義理の娘4人、孫8人でキャンピングカーの中で荒れ果てた土地に暮らしている。当然、子供達は学校にも行っていたいので文字が読めない。仕事もしていないので盗品を売りさばく事によって生活をするしか無い。彼らは家族の絆を大切にして特に一家の大黒柱である母のアンジェリーヌは力強く頼りなれる存在で子供たち義理の娘たちにも愛情深い。生活は乏しかったがそれでも家族愛で満たされていたので幸福だった。ある日彼らに本を読んでくれる女性が現れる。女性は何とか読書の面白さ、教育の必要性を本を読むことによって伝えようとする。最初は大家族は彼女を外人と警戒するが、毎週水曜日に雨の日や嵐の日も欠かさず来て子供たちに童話を読み聞かせてくれるエステールに徐々に心開いてく。
映画を観たような気分。脳裏に物語の光景が鮮明に浮かぶ。本書は1997年に出版され現在も読み継がれている。一時的なベストセラーでは無く本書のようなロングセラーは良い本に出会う確率が高い。貧困層、迫害される人たち、弱者側の立場を描いた作品が好きなのかもしれない。パリのエッフェル塔あたりに観光に行くといたるところにジプシーと思われる人たちがいる。ヨーロッパではパリはかなり多い。筆者であるフェルネはパリ出身で幼い時から彼らの存在を身近に感じていたのだろう。本書を書くために、ジプシーに関して入念に調べ上げまるでそこに住んでいるようだったとフェルネは述懐する。フェルネ自身も子供を3人産み母親としての視点が物語によく表現されていて子供たちへの寛大さに私は感服した。そこが私は一番印象に残った。

 

本を読むひと (新潮クレスト・ブックス)

本を読むひと (新潮クレスト・ブックス)