インド夜想曲

 とても美しい小説だった。150頁程の中編小説である。私がなぜこの本を手に取ったか。タイトルが気になった。インドを舞台にした小説が面白くないはずがない。ボンベイ、ゴア、マドラスと私が旅したインド旅行とルートが一緒だったので尚更読みたくなった。その上須賀敦子氏の翻訳である。本書はとても幻想的でインドの文化的な側面を上手く描写している。中編だがその分、一語一句、奥が深いと思った。物語の主人公は過去の友人を探しにインドに旅に出る。インドの貧困を知ったりインドの豪勢なホテルを満喫したり浜辺でのアメリカ人との出会いがあったり、そのどれもがとても美しくリアルだ。最後の結末は私にはとても予想出来なかった意外な展開だったが、筆者の小説家のレベルの高さだと思う。全体的に無駄がなく完璧な小説だと思う。インドが恋しくなったら読み返そう。

 

インド夜想曲 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

インド夜想曲 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)