インドへの道

 フォースターの代表作でもあるインドへの道を読了。彼は異なる価値観を結びつける事を主題にしてきた作家だ。今回も同様にイギリス人とインド人、支配者と被支配者をどうやって宥和できるかという非常に難しい問題に取り組んだ。 私はインドとイギリスもどっちとも好きな国だ。両方の国にも旅行に行ったことがあるので現地の人達の性格も多少わかる。イギリス人は皮肉屋で階級社会で世界中を支配してきたというプライドがあり神のように傲慢な態度をとる。イギリス旅行中はイギリス人は冷たくて個人主義的な人達だなとしか思わなかったがそれでもイギリスへの憧れは消えない。一方、インドはカースト制度があり女性の社会進出はまだまだ遅れている。私はインドには過去二回渡航しインド人の優しさや親切心を知っているのでインドを舞台にした小説は大変面白く読む事が出来た。インド人医師のアジズとフィールディング学長との友情は素晴らしい。フォースターはなぜここまで東洋的な性格を理解出来たのだろうか。勿論フォースターがインドに複数回、足を運びインドの文化に直に触れたのが要因だろうが、エピグラフにもされている彼のインド人の友人の存在が重要だろう。フォースターはインド滞在中にマスードというインド人弁護士の家に厄介になっていた。一方マスードがイギリスに来てオックスフォード大で勉強している時に2人はスイス旅行に行ったりしてる。そして彼らの親交があってこのインドへの道が書かれたのだ。話を小説に戻るが私は同じアジア人としてアジズ医師に非常に共感した。特に西洋への捉え方が。西洋人は肌の色も違うし喋る言語も違う全く異質の存在なのだ。おまけにインドはよそ者のイギリス人に支配されながら生活しなければならない。その事についてはとても不満がある。また一方ではイギリスにとても好意をもっている。呪文で解決出来ない問題は医学で解決するのを教えてくれた。またイギリス人たちとの友情も大事だ。その存在がフィールディング学長と同様にムア夫人である。ムア夫人の息子のカレンダーは傲慢でインド人を見下している嫌な男だ。殆どの在印のイギリス人は仕事の付き合い以外においてインド人との接触をを持とうとせず寧ろ軽蔑すらしている。しかしムア夫人だけはアジズ医師を心から良く思っている。だからアジズは個人的な関係においてはとてもイギリス人が好きなのだ。小説の中でのインドの季節や自然、食事、生活スタイル、宗教、遺跡などの描写はとても正確に書かれていると思う。実際に私のインド旅行の体験と照らし合わせてみて尚更そう思う。 フォースターは当時91歳まで生きた大往生した人物だがインドは彼にとって特別に思い出のある場所なのだと思う。また再読したい。

 

インドへの道 (ちくま文庫)

インドへの道 (ちくま文庫)