ビラヴド

 1993年にアフリカ系アメリカ人女性として初のノーベル文学賞を受賞したトニ・モリスンのビラヴドを読了。圧倒的読後感というか素晴らしい小説を読み終わった後の達成感に浸っている。なぜこんなに良い小説が絶盤になっているのか全くの謎である。普通の書店で買えるように再発行すべき作品だと思う。彼女はこのビラヴドで不動の地位を築きその後ノーベル文学賞を獲った。ニューヨークタイムズのブックレビューではビラヴドを過去25年に刊行された最も偉大なアメリカ小説に選ばれている。まず物語の始まりを説明すると母親のセサとその娘のデンヴァーが住む124番地の自宅には女児の幽霊が住みついていて家族に散々の嫌がらせをする。既にセサの長男と次男は逃げ出して帰ってこないし夫とは遠い昔に生き別れになっているので母娘で耐えている状況なのだ。ある日サラとデンヴァーとサラの恋人のポールDがサーカスを観に行った帰り家に着いてみると庭の切株の上に若い女がドレスを着て寝てるのだ。その女性の名前はビラヴド(Beloved)といい訳あって昔赤ん坊の時に死んだサラの長女の墓石に彫った名前と一緒だったのだ。物語の核心に触れるわけにはいかないので敢えてネタバレはしないが過去を辿っていくと全ては明らかになる。サラが遠い昔に奴隷として売られスウィートホームという農園で働いてた時、そこでハーレーとう同僚と恋仲になり子供まで授かる。長男と次男と赤ん坊の長女、そして第4子を妊娠中に過酷な農園の労働から逃れるために逃亡を企てる。仲間と共にそれを実行に移すがある事件が起きる……南北戦争や黒人奴隷解放運動などの歴史的事実を交えて物語は進んでいく。昔のまだ未開だったアメリカの広大な大地、田園風景の描写もよく伝わって来た。私は日本人だから深くはよく分からないがアメリカの青春小説といってもいいのではなかろうか。とにかく大変良く出来た小説だと思う。

 

ビラヴド―トニ・モリスン・セレクション (ハヤカワepi文庫)

ビラヴド―トニ・モリスン・セレクション (ハヤカワepi文庫)